宇宙探査の新たな扉を開く
2021年、服部報公会の「報公賞」が、宇宙推進工学の分野で著しい貢献を果たした國中均氏に授与されることが決定しました。國中氏は電子サイクロトロン共鳴放電式イオンエンジンの開発を手掛け、これが「はやぶさ」及び「はやぶさ2」探査機の主推進として採用されました。彼の研究は、従来の宇宙探査機の制約を打破し、宇宙の理解を深めるものです。
従来技術の限界を乗り越える
従来のイオンエンジンは、熱電子放出によるプラズマ生成に依存しており、取り扱いやすいものではありませんでした。そのため、特殊な材料を多く使用し、短寿命や運用の難しさが課題とされていました。しかし、國中氏の開発したイオンエンジンは、マイクロ波を用いて選択的に電子を加熱することで、プラズマを生成する画期的な方法を採用。これにより、高い省エネ性能と耐久性を実現しました。
「はやぶさ」の成功がもたらした影響
「はやぶさ」は2003年に打ち上げられ、2005年に小惑星イトカワへ到達、続く2010年には地球に帰還することに成功しました。この成功により、地球と小惑星間の往復探査が実現し、小惑星サンプルリターン観測法が確立されました。この新しい探査法は、米国NASAを含む他国の宇宙計画にも大きな影響を与え、世界中で小天体探査への関心を高める結果に繋がりました。
「はやぶさ2」ではさらに改良されたエンジンが採用され、小惑星リュウグウからのサンプル回収に成功。これにより、國中氏の技術は更なる進化を遂げ、宇宙科学の新たな基盤をも築きました。
国内外での高評価
國中氏の研究は、日本国内外で広く評価されており、各種の賞を受賞しています。特に文部科学大臣表彰科学技術特別賞や応用物理学会解説論文賞は、彼の研究成果が学術的に重要であることを象徴しています。また、彼は全体的なイオンエンジン性能向上に寄与するとともに、半導体産業などにもその技術を展開し、多様な分野への貢献も果たしています。
未来への展望
2021年の報公賞贈呈式は、来る10月8日に行われ、賞金として1,000万円が贈呈される予定です。また、同時に15件の研究に対して総額1,500万円の奨励金も付与されます。服部報公会は、1931年から現在まで、工学の進歩に寄与する優れた研究者たちを認めてきました。これにより、未来の科学技術の進化を支えています。再次、國中均氏の研究は、宇宙探査を新たな次元へと引き上げ、これからの人類の宇宙への挑戦に大きな影響を与えることでしょう。
受賞者の略歴
國中均氏は、東京大学で航空宇宙工学を専攻し博士号を取得。その後、文部科学省宇宙科学研究所や宇宙航空研究開発機構でのキャリアを経て、宇宙科学研究所所長に就任するなど、常に宇宙科学の最前線で活躍してきました。彼の貢献は、今後の宇宙探査の未来にも確実に受け継がれていくことでしょう。
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