岡山大学、オオムギの芒形成における新たな遺伝的メカニズムの解明
2025年1月29日、岡山大学から発表された研究により、オオムギ(大麦)の穂先に見られる針状の突起「芒(ぼう)」の形成に関わる新しい遺伝的メカニズムが明らかになりました。この発見は、オオムギの収量や品質向上につながる可能性があります。
研究の背景と重要性
芒は、特にイネ科の植物において、光合成に重要な役割を果たしています。オオムギの芒が正常な形のものと比較して、短く曲がる「short and crooked awn (sca)」という突然変異体は、細胞の長さや数が減少し、さらにセルロース量まで影響を及ぼすことが確認されました。この突然変異体の発見は、40年前に岡山大学・農業生物研究所で化学薬品によって誘発されたものでしたが、その原因となる遺伝子は未解明のままでした。
新たに解明された遺伝機構
今回の研究では、岡山大学大学院環境生命科学研究科の中村光希博士後期課程3年、そして資源植物科学研究所の武田真教授や池田陽子准教授による共同研究グループが、オオムギの遺伝子解析を通じて、sca突然変異が「EMBRYONIC FLOWER 1 (EMF1)」という遺伝子に異常があることを明らかにしました。この遺伝子は、ヒストン修飾を介した遺伝子の発現を調整する重要な役割を担っており、これにより芒の形成が管理されていることが分かりました。
研究の意義と将来の展望
この研究は、新たに見つかったヒストン修飾因子を基にして、芒の長さや硬さを調整できる可能性があり、さらには有用な遺伝子の発現を調節する新しい手段としても活用できると期待されています。また、この知見が生物学や農業の分野に貢献することは間違いありません。
研究成果は2024年12月20日に「Plant and Cell Physiology」という国際誌で早期に公表され、その後2025年1月23日に行われた定例記者会見においても発表されました。
研究者の視点
池田准教授は、芒に関する研究がイネとの違いを示すことの重要性を強調し、オオムギが独自の遺伝制御機構を持つことを示すこの研究のユニークさを述べました。また、岡山大学の資源植物科学研究所では、約10年にわたる地道な研究の成果として発表に至ったことにも言及しました。
研究資金と関連情報
本研究の一部は、科学研究費からの助成を受けて進められました。詳細な研究内容については、岡山大学の公式サイトや関連資料で確認できます。
オオムギの芒研究は、今後の農業技術の進展にも大きな影響を与えると考えられています。大学としての持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みも加え、このような研究が国家的な科学技術の進歩に寄与することが期待されています。