今坂庸二朗 パリ個展
2022-10-06 09:01:55

パリで光と闇が織りなす風景:今坂庸二朗個展「リターニング・バイユー」が開催

写真家・今坂庸二朗のフランス・パリ初個展「リターニング・バイユー」が、清昌堂やました THE ROOM主催のもと、2022年10月17日から30日まで開催されます。

今坂の作品は、世界各地の大自然を舞台に、気候や風景の変化を長期間かけて観察し、唯一無二の瞬間を切り取ったものです。それらは単なる風景写真にとどまらず、その場所から連想される過去や現在、そして未来をも想起させるイメージを創り出すことをテーマとしています。

今回の個展では、2021年春に約6週間かけてアメリカ南部、バイユーと呼ばれる湿地帯で撮影された作品が展示されます。今坂はバイユーの自然環境について、「原始の森を思わせる静かな光景が、ゆっくりと流れる水に映し出され、時間の感覚を麻痺させる」と表現しています。

展示される作品は全て、19世紀の写真技法である湿版写真/コロジオン・プロセスを用いて制作されています。この古典的な技法は、シャープさに欠け、イメージが剥がれたり、薬品の跡が残ったりするなど、デジタルカメラでは表現できない独特の有機的なイメージを生み出します。今坂はこれらの特徴を、人の記憶の不確かさと儚さに例え、デジタルカメラでは捉えられない自然の時間の流れを表現していると言います。

膨大な情報を記憶するデジタル機器との対比として、今坂は、たとえ曖昧であったとしても、それぞれの心に刻まれた記憶の重要性を問いかけています。

今坂庸二朗と主催者である山下有佳子は、今回の個展について以下のように語っています。

「今回の個展で発表する作品は、アメリカ・ルイジアナ州、ニューオリンズ周辺のバイユーと呼ばれる湿地帯で撮影したものです。ニューオリンズとフランスの関係は古く、17世紀にまで遡ります。バイユーという言葉は、ルイジアナ州に移り住んだフランス系移民、アカディア人によって名付けられました。ギリシャ語のArcadisに語源を持つこの言葉はユートピア・理想郷を意味し、新大陸を目指した彼らの足跡を知る上でも興味深いものです。時代を超えてフランス・パリで発表できることを嬉しく思うと同時に、過去、現在、そして未来を繋ぐランドスケープの中に、現代人が忘れかけている悠久の時間の流れを感じてもらえたら幸いです。」(今坂庸二朗)

「パリはかつて闇に包まれていたと言われています。今坂の作品は、薄さわずか1mmのガラスに薬品を塗って制作された湿版写真で、荒々しくも雄大なバイユーの自然を極めて繊細な技法で表現しています。青々とした湿地帯の景色から色を消し去り、白と黒という要素のみを残した作品からは、光を感じ取れます。本来、光は色彩を生み出し、その色は目に見えませんが、今坂の作品は、光そのものが色を湛えるような感覚を我々に与えます。私たちの心の中にも存在する闇と光。さまざまな色を想像しながら、未来の情景を見出す時間をお楽しみ頂ければ幸いです。」(山下有佳子)

今坂庸二朗は1983年広島生まれ。日本大学芸術学部卒業後、2007年に渡米し、ニューヨークのプラットインスティテュートでMFAを取得しました。ミネアポリス美術館、東京都美術館、パリフォトなどでの個展やグループ展で作品を発表し、サンノゼ美術館、ミネアポリス美術館など、複数の美術館やプライベートコレクションに作品が収蔵されています。主に自然の風景を被写体とした作品を制作し、欧米を中心に高い評価を得ています。2022年2月には自身初となる東京での個展「Wet-Land」を開催し、同年夏には「TSUNAGU – 表参道 ストリート アート プロジェクト」でFENDIに招聘され、未発表作品を展示するなど、日本国内での活動も活発化しています。

山下有佳子は1988年京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、サザビーズ・インスティチュート・オブ・アートにてアート・ビジネス修士課程を修了しました。2017年に「THE CLUB」を設立し、2022年には「Art Collaboration Kyoto」プログラムディレクターに就任。京都芸術大学の客員教授を務め、同年より京都市成長戦略推進アドバイザー(アート市場活性化担当)にも就任しています。

今坂庸二朗の「リターニング・バイユー」は、光と闇、過去と未来、デジタルとアナログといった対照的な要素が織りなす独特な世界観を体験できる貴重な機会となるでしょう。

会社情報

会社名
株式会社清昌堂やました
住所
京都市上京区小川通寺の内上る本法寺前町612番地
電話番号
075-431-1366

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