高槻市の生活保護却下、90歳女性の成年後見人弁護士が提訴
大阪府高槻市が、90歳を超える女性の生活保護申請を、オムツや療養セットリースの費用を理由に却下した問題で、女性の成年後見人弁護士が、高槻市に対し、保護申請却下処分の取消訴訟を提起した。弁護士は、高槻市の対応は、生活困窮者に対するセーフティーネットを放棄するものであり、憲法違反であると主張している。
女性は、月額7万円程度の収入しかないものの、以前は茨木市の特別養護老人ホームに入所しており、収支も安定していた。しかし、昨年から体調を崩し、高槻市の病院に入院。入院費に加え、オムツや療養セットリースの費用がかかり、収入では生活が困難な状況となった。
弁護士は、女性の預貯金が10万円を下回った段階で、高槻市に生活保護申請を試みたが、高槻市は、後期高齢者医療の限度額適用・標準負担額減額認定によって、女性の収支が安定すると判断し、申請を却下した。しかし、実際には、医療費は削減されたものの、オムツや療養セットリースの費用は変わらず、女性の赤字は解消されなかった。
弁護士は、再度、生活保護申請を行ったが、高槻市は、オムツや療養セットリースの費用が最低生活費を超えていることを理由に、再び申請を却下した。高槻市は、病院との交渉で費用を削減するよう主張しているが、弁護士は、生活保護受給者であれば、病院は生活保護受給者基準の費用でオムツや療養セットリースを提供することから、高槻市の対応は、生活困窮者を支援する責任を放棄しているに等しいと批判している。
さらに、弁護士は、大阪府に対して、高槻市の決定に対する審査請求を行ったが、大阪府は、高槻市からの弁明書が届かず、審査に2年程度かかると回答。弁護士は、生活保護法では、審査請求から50日以内に裁決を行うよう義務付けられており、高槻市と大阪府の対応は、生活保護申請者に対する不服申立を事実上無意味にするものだと指摘する。
弁護士は、高槻市の対応は、生活困窮者に対するセーフティーネットを放棄するものであり、憲法25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害していると主張。今回の訴訟を通じて、高槻市の対応の是非を司法に判断してもらう考えだ。
近年、自己責任論が蔓延し、老後の生活困窮は個人の責任として捉えられる傾向にある。しかし、弁護士は、生活困窮者に対するセーフティーネット構築は、行政の責務であり、それを放棄することは許されないという。今回の訴訟は、生活困窮者に対する行政の責任と、セーフティーネットの重要性を改めて問うものとなるだろう。