宇宙技術を活用した防災システムの誕生
2021年に静岡県熱海市で発生した盛土崩壊災害は、日本の防災対策に新たな視点をもたらしました。この災害を契機に、2023年5月には盛土規制法が施行され、今後は全国の自治体において定期的な盛土調査が必須となります。しかし、数十万箇所に上る盛土の把握や不法盛土の監視は、限られた人員と予算では非常に困難です。
この課題を解決するために、株式会社スペースシフトと株式会社ウエスコが連携し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金(第二期)の技術開発テーマに採択されました。
プロジェクト概要
本プロジェクトでは、「マルチモーダルAIによる違法・不正盛土検知と土砂崩落リスク評価」という技術開発課題の下、ウエスコがプロジェクトの代表機関として、特殊な防災・インフラ分野の専門知識を活かして事業を推進します。スペースシフトは、光学衛星データや合成開口レーダー(SAR)衛星データを統合・解析するAIアルゴリズムの開発に貢献し、土砂崩落リスクを算定するモデルを創り上げる役割を担います。
この新システムは、衛星データとAI技術を組み合わせることで、広範囲にわたる盛土を自動で検知し、その安全性を定量的に評価できるよう設計されています。特に重要な点は、気象条件に依存せず安定的な監視が可能になることで自治体のニーズに応じた多様な検知モードを検討しています。
事業の展開
この技術開発が完了すれば、自治体向けの盛土調査支援サービスが始まります。さらに、インフラ管理事業者や保険・金融業界への適用も視野に入れ、最終的にはアジア諸国への展開を試みることも計画しています。これにより、災害リスクの管理や防止策が飛躍的に向上し、持続可能な社会の実現に寄与することを目指しています。
スペースシフトの取り組み
株式会社スペースシフトは、地球観測衛星から取得したデータを解析する精密なAI技術の開発に取り組んでいる企業です。2009年の設立以来、そのテーマ「Sense the Unseen from Orbit」に基づき、インフラ管理、防災・減災、農業、環境保全などさまざまな分野で応用可能な衛星データ解析技術を進化させてきました。特に、事業共創プログラム「SateBiz(サテビズ)」を通じ、衛星データを用いた持続可能な社会の実現に向けた取り組みを行っています。
本プロジェクトがもたらす新たな盛土監視システムは、今後の防災業務を変革し、安全な社会を築く基盤になることでしょう。