文豪谷崎潤一郎の特別展が開催
秋の特別展「文豪は戦の間に咲く―谷崎の戦争と平和」が、芦屋市谷崎潤一郎記念館で開催されます。この展覧会では、日本が大正デモクラシーの時代を迎えるまでの流れと、谷崎潤一郎の文学がどのように影響を受けたかを紐解いていきます。
谷崎潤一郎は1886年、東京に生まれました。彼が成長する時代は、まさに「脱亜入欧」が叫ばれ、日本がこの地域での自立を模索する時期でした。20代半ばには、代表作「刺青」で文壇に登場し、その後、第一次世界大戦に日本が参戦する中で文筆活動を本格化させていきます。
大正デモクラシーと新しい社会の形成
第一次世界大戦(1914~1918年)は、日本にとって比較的小さな損害で済んだものの、経済的には大きな恩恵を受けました。この好景気の中で、日本の近代化が進み、都市大衆社会の形成や「郊外」という新しい生活圏が誕生しました。これにより、新たな文化や生活様式が生まれ、戦後平和な時代を迎えることとなります。
同時に、帝国支配が進む中で国際的な摩擦も生じ始め、日本社会の視野が広がる一方で、さまざまな矛盾を生み出していきました。谷崎は、そのような時代背景の中で作家活動を展開し、彼の描く作品は社会の変化を巧みに反映しています。
「細雪」の物語が描くもの
谷崎の代表作「細雪」は、郊外で暮らす新しい中産市民を中心に、豊かで美しい日常を描きます。この作品は第一次世界大戦の終結を境に、日本と世界の変化を家族の日常に巧みに織り込み、普遍的な価値を持った物語として多くの読者に愛されています。物語の舞台は、1936年秋から1941年春の間で、日本と中国の戦争が始まる直前までの時期です。
戦争と平和の間で
戦争の影響を受けながらも、「細雪」の描く生活世界は、それを超えて新しい時代を切り開く力をも秘めていると言えます。谷崎潤一郎の作品を通じて、戦争と平和の間でどう揺らぐ日本と世界を捉えるかが、本展の大きなテーマとなっています。
関連イベントのご案内
この特別展に関連するイベントとして、学芸員による解説会が10月26日に行われます。参加希望者は要予約ですが、観覧料のみでご参加いただけます。定員は20名ですので、興味のある方はお早めに予約をお勧めします。
【会期】2025年9月13日(土)から12月7日(日)まで、美しい秋のひとときを谷崎の世界に浸れる機会をお見逃しなく!
観覧料は一般600円(団体料金は480円)。さらに、65歳以上や特定の手帳をお持ちの方は、介護者を含め半額でご利用可能です。また、11月8日・9日は観覧無料です。
まとめ
この特別展は、戦争と平和、そして文化の交錯を文豪の視点から考える貴重な機会です。皆さんをぜひ芦屋市谷崎潤一郎記念館でお待ちしております!