ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、2025年に向けて日本企業のAIへの投資計画や人材育成の現状を示す調査を発表しました。今回のレポート「From Potential to Profit: Closing the AI Impact Gap」では、日本を含む19市場の1億ドル以上の売上を誇る企業の経営層1,803人にインタビューが行われました。調査は昨年に続くもので、AIを経営上の重要事項として注視している企業が依然として多いことがわかりましたが、同時に人材のスキル向上が追いついていない問題も浮き彫りになっています。
2025年に、日本企業の約半数がAIに2,500万ドル以上を投資する意向を示していることが判明しました。これは、調査に回答した企業の3分の1が同等の投資を行う予定であることからも明らかで、世界的にも最も高い割合となっています。このことから、AIは企業戦略の最優先事項であると言えます。具体的には、AI先進企業では投資の80%以上を基幹機能の再構築や新しい価値を提供するために使用していますが、他の企業は56%を生産性の向上のために小規模な取り組みに使っている傾向があります。
興味深い点として、AI先進企業では、ターゲットとするユースケース数が平均して3.5件であるのに対し、他の企業では6.1件と多岐にわたります。この「深さ」を重視するアプローチが、二倍以上の投資利益率(ROI)を生む要因となっています。一方で、回答企業の60%はAIによる価値創出に必要な財務指標を適切に定義・モニタリングできていない状況にあります。
また、67%の経営層が「AIエージェント」の活用を検討しており、日本では72%に達しています。AIエージェントとは、自律型のAIシステムであり、人間の介入を最小限にした形で、業務を遂行する役割を果たします。
ただし、AIの導入がもたらす人員削減については、わずか7%の経営層がその可能性を示唆しているに過ぎません。68%の企業は従業員数を現状のまま維持する方針であり、AIへの適応のための人材のスキルアップに注力する必要があるとしています。これに対し、実際にアップスキリングを行った企業は全体の3分の1未満という数字に留まっています。これは、従業員がAI技術に適応し、公平な雇用環境を維持するための水準には達していません。
このような状況を受けて、マネージング・ディレクターである中川正洋氏は、「日本企業のAI投資意向は世界的にも高い。今後は、実際に価値を創出するための具体的な取り組みが肝要である。資金投入を特定のユースケースに集約し、KPIの設定とモニタリングを実施することが必要だ」と強調しています。
BCGは、1963年に設立された戦略コンサルティングのパイオニアであり、幅広い業種にわたるクライアントに対して、持続可能な競争優位性の構築や社会貢献を重視したコンサルティングサービスを提供しています。日本では1966年に東京に拠点を設け、その後名古屋、大阪、福岡にオフィスを展開し続けています。
AI投資の増加は貴重な機会である一方、効率的な人材育成もまた、企業の成長と存続にとって重要な要素となっています。企業は新しい技術に適応し、持続可能な成長を実現するために、この課題に向き合っていく必要があるでしょう。