ブリヂストンと産総研が開発した使用済タイヤの革新的リサイクル技術

タイヤゴムの新たな資源化への挑戦

近年、環境問題への関心が高まる中、使用済みのタイヤを効果的にリサイクルするための技術が求められています。国立研究開発法人産業技術総合研究所（以下、産総研）と株式会社ブリヂストンは、タイヤゴムを化学的に分解する新たな技術を共同で開発しました。この技術は、タイヤ製品から有効成分を効率的に取り出すことを目指し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することが期待されています。

１. 開発した技術の詳細

新たに開発されたケミカルリサイクル技術では、タイヤに使用される加硫ポリイソプレンゴムを、室温付近で触媒と溶媒を使用して化学分解します。この過程で、タイヤゴムが液状のポリマーに変化し、イソプレンとカーボンブラック（CB）の分離が容易になります。化学分解を経た後は、液状ポリマーを熱分解することで、イソプレンモノマーが主成分として回収される仕組みとなっております。この技術により、タイヤの製造に必要な原料に戻すことが可能とされています。

２. 技術開発の背景

タイヤ産業は、世界で28兆円以上の売上高を誇る大規模な市場です。日本の企業も大きなシェアを有し、今後のモビリティの進展の中でもタイヤの需要は増加すると見込まれています。一方で、使用済みタイヤの処理は現在、燃料としての活用が主流であり、環境への影響が懸念されています。そこで、より持続可能な社会の実現に向けて、使用済みタイヤを繰り返し利用できるケミカルリサイクル技術の必要性が高まってきました。

３. 研究の経過

ブリヂストンと産総研は、持続可能な社会に向けたリサイクル技術の発展を目指して、新しい研究に取り組みました。特に、加硫ポリイソプレンゴムの化学分解を実現するための触媒開発には多くの時間をかけ、それによってメタセシス反応の適用に成功しました。これにより、ウィズゴム特有の多成分の難しさを克服し、実際の製品であるタイヤに応じた適応力も示しました。

４. 実用化に向けた今後の展望

産総研は、今後も加硫ポリイソプレンゴム以外の材料、例えばブタジエンゴムなどへのメタセシス反応の適用を目指します。また、新たに分離精製に成功した環状イソプレン4量体については、未利用炭素資源としての応用も検討しています。さらに、使用済みタイヤのケミカルリサイクル技術を社会に実装すべく、さらなる効率的な反応の開発や技術のスケールアップに向けた取り組みを進める予定です。2030年代には、商業化が視野に入っています。

このように、ブリヂストンと産総研の技術開発は、リサイクルの新しい可能性を切り開くだけでなく、環境問題に対する一歩前進をもたらすものとなるでしょう。