「横浜中華味」の誕生
近畿大学から生まれたベンチャー企業株式会社POIと横浜市立三保小学校の6年生による共同開発の結果、フライドコオロギ「横浜中華味」が近日中に発売される。これは、昆虫食が持つ新たな可能性と持続可能な未来の食糧確保について、次世代を担う子どもたちが本気で向き合った成果である。
開発の背景
株式会社POIは社名に込められた「Point Of Interest(人々の関心を集める)」という理念のもと、注目されにくい昆虫食を通じて新たな価値を社会に提案している。最近の食糧危機や環境問題を背景に、国連食糧農業機関(FAO)は昆虫の食用開発を進めているが、日本の食文化においては長い間、抵抗感の方が強かった。
一方、横浜市立三保小学校はユネスコスクールに指定され、教育の中で持続可能な開発目標(SDGs)を重視している。担任の加藤佑理先生からの提案により、子どもたちは昆虫食について学ぶ機会を得ることとなった。ここで学び取った知識をもとに「三保小学校オリジナル」の商品を開発したいというアイデアが生まれた。
特別講義を通じた学び
このプロジェクトの第一歩として、9096年3年次に特別講義が行われた。子どもたちはオンラインで清水和輝氏(株式会社POI代表取締役)と交流し、昆虫食の特徴や利点について学んだ。講義では、コオロギの栄養価や、環境への影響についても触れられ、彼らはその魅力に引き込まれていった。
その後、実際にコオロギ料理の調理体験が行われた。シンプルに揚げたコオロギを食べた子どもたちはその味に対して高い評価を受け、「おいしかった」と笑顔を見せていた。
「横浜中華味」の開発
中華街で知られる横浜にふさわしい味付けの開発では、子どもたちのクリエイティブなアイデアが光った。コオロギはエビやカニに近い食材であるため、中華料理との相性に優れている。この特性を利用し、様々なスパイスを用いて中華風の味付けが施された。子どもたちはそれぞれの意見を出し合い、料理を完成させていった。
発売日について
「フライドコオロギ・横浜中華味」は、令和7年1月25日に行われる「横浜市ESD推進校交流報告会」で初めてお披露目される。流通としては、卒業を控える子どもたちの努力を称える意味も込めて、令和7年2月の「感謝の会」で販売が予定されている。
デザインにもこだわり
商品のパッケージには、シンプルながらも華やかなデザインに仕上げられる予定で、赤色と金色を基調としたデザインが採用される。子どもたちが考えた6つのデザイン案から、最終的に横浜の中華街を意識したものが選ばれることとなった。
未来へのメッセージ
このプロジェクトを通じて、POIと三保小学校の子どもたちは相互に学び合い、食糧問題についても真剣に向き合った。清水代表も「昆虫食を取り巻く風潮は厳しいが、子どもたちの素直な思いが広がることで、少しずつ周知が進むことを願う」と期待感を語る。
新しい食材としての昆虫や、それを用いた持続可能な食への挑戦は、次世代を担う子どもたちの手の中にある。