新刊『世界ひと皿紀行料理が映す24の物語』の魅力
2023年2月18日、岡根谷実里さんが執筆した新書『世界ひと皿紀行料理が映す24の物語』が発表されます。本書は、アジアやヨーロッパ、中南米、オセアニアにおける家庭料理を通じて、各国の文化と生活を描いた24編のエッセイで構成されています。特に、インドのナガランドでの珍しい料理スタイルに光を当てる内容が、多くの読者の興味を引くことでしょう。
## ナガランドへの旅
ナガランドはインドの北東部に位置し、険しい山々と豊かな自然に囲まれた地域です。この地はインドの中でも異なる文化を育んでおり、特に発酵食品が豊富です。岡根谷さん自身、発酵食品の文化に引かれ、友人の勧めでナガランドを訪れることになったという。
飛行機でディマプルに着くと、周囲には山道しか見えず、自然の壮大さに圧倒される様子が伝わります。地元の人々と交流しながら、彼女はその家庭料理を学び、食卓を囲むことで地域の文化を理解していきます。
## 発酵文化の実態
ナガランドの家族は、料理をする際に多くの発酵食品を取り入れています。無塩発酵たけのこや里芋の葉を用いる料理は、特に煮込み料理にその旨味を加える要素となります。岡根谷さんは、日本でも知られている納豆の存在を強く意識し、現地の発酵納豆との違いを興味深く感じました。
現地では納豆は「アクニ」という名で知られ、家庭ごとに味に違いがあるそうです。稲藁ではなく、バナナの葉を使い、独特な発酵工程を経て作られるその納豆は、日本のものとは全く異なる香りがします。この点からも、文化や地域による食品の多様性が浮かび上がります。
## 豚肉のアクニ煮
ある日の夕食、中でも特に印象的だったのは「燻製豚肉のアクニ煮」でした。母が手際よく料理を進める腕前が目の前で繰り広げられ、岡根谷さんはその香りに満たされ、次第に感情が高まっていくのを感じました。
煮込みが進むにつれ、台所の空気は納豆の香りに包まれ、日本の家庭で過ごした日々を思い出させるような郷愁を引き起こします。しかし、地元の人々にとってこの匂いは決して好意的に受け入れられないことも知り、複雑な気持ちを抱えます。料理を通じて家族の絆が深まる一方、文化の違いから生まれる理解や誤解があることも忘れてはいけません。
## 文学と食文化の交差点
本書『世界ひと皿紀行料理が映す24の物語』では、食文化を通じて人々のつながりと分断を描いています。一皿の料理によって語られる何か深い物語があり、世界には多くの異なる文化が存在することを知る機会を提供してくれるでしょう。岡根谷さんの旅は、料理を学ぶだけでなく、食の背後にある豊かな物語を探求することにもつながっています。
岡根谷実里さんの作品は、食の文化に興味を持つ人々にぜひ手に取っていただきたい一冊です。