高齢者の住み替え問題の実態
現在、日本は世界で最も高齢化が進んでいる国の一つです。その中で、高齢者の住環境は大きな課題となっています。特に、65歳以上の高齢者が賃貸住宅を探す際の困難さは、深刻な社会問題として浮上しています。最近発表された株式会社R65が実施した「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」の結果をもとに、実情を探ってみます。
調査の背景と目的
調査期間は2025年7月28日から30日までの3日間。全国の65歳以上で賃貸住宅の部屋探しの経験がある500名を対象にインターネットで実施されました。調査の目的は、現在の高齢者がどれだけ賃貸住宅を借りることに苦労しているのか、またその理由を明らかにすることです。
高齢者の賃貸住宅への入居拒否
調査結果によると、「部屋探しに苦労した」と回答した高齢者は全体の42.8%、特に直近1年内に探した人の61.2%が困難を感じています。この背景には、貸主側の不安、特に「孤独死による事故物件化」への懸念があると考えられています。調査では、おおむね3人に1人(30.4%)が年齢を理由に入居を断られた経験があり、特に過去1年の断られた割合は36.7%に達しています。
部屋探しの実態
また、調査において多かった苦労の理由は、候補物件の少なさです。全体の52.8%が「候補物件が少ない」と回答し、これは直近1年では63.3%に上昇しています。加えて、経済的な負担についても"通常よりも経済的負担が大きかった"との声が31.3%にのぼりました。多数の高齢者が適切な住宅環境を求める中で、物件が現状不足しているのは深刻な問題です。
内見候補の満足度
さらに、内見候補に関する満足度は二極化しています。「どちらとも言えない」と答えた人が42.8%、一方で「非常に満足」と感じた人も16.3%いる一方で、「非常に不満」と感じる人も10.2%と反響が分かれています。このような状況では、更なる物件の供給と質の向上が求められます。
高齢者の住まいの「理由」
高齢者が部屋を探す理由は多岐にわたり、その中で最も多いのが「適切な広さへの住み替え」(36.2%)、次いで「家賃の低い物件への住み替え」(23.6%)でした。高齢者の生活様式やニーズを反映した、柔軟な賃貸住宅の提供が必要とされています。特に、、立ち退きによる引っ越しを余儀なくされたケースも多く、特に1〜2年前がピークであったことから、引っ越し支援措置の検討も求められるでしょう。
未来への展望
2024年には「住宅セーフティネット法」の改正が予定されており、高齢者への支援が強化される見込みです。これらの制度が奏功すれば、新たに安心して入居できる環境の整備が進むことが期待されています。しかし、制度整備が進む中でも現実的な苦労の声が多いのも事実です。今後、高齢者が安心して住み続けられるためには、不動産業者や行政が連携し社会全体での支援が不可欠です。
まとめ
高齢者の住宅問題は、日本における高齢化の影響を色濃く反映した現象です。調査結果からは、物件の不足と入居拒否という実態が明らかとなりました。これを踏まえ、さらなる支援の制度改革と、具体的な施策の実施が求められています。高齢者が住みやすい社会を実現するために、我々全員にその意識が求められます。2030年には高齢者世帯が800〜900万世帯に達する見込みもあり、今後の動向には特に注意が必要です。