SNSでの嫉妬とネットリンチが生む壮絶な復讐劇『トレパク冤罪』

SNSの闇が描くリアルな物語『トレパク冤罪』

現代のSNS社会では、日常における交流がデジタルにシフトし、私たちの生活スタイルが劇的に変わりました。しかし、同時にその世界の裏側には、嫉妬や根拠のない非難によって引き起こされるネットリンチも存在します。そんな現象を切り取り、強烈な愛と復讐劇を描いたのが、小宮サツキの新作『トレパク冤罪』です。

愛するキャラクターとの運命的な出会い

物語の主人公は、平凡なヒラ社員・白井佑真と、優秀な経理部の課長補佐である妻・さやかです。さやかは、夫にそっくりな漫画キャラクター「日下部湊」に熱中することで、二次創作の世界へ足を踏み入れます。彼女は絵の才能を持ち、すぐにトップ絵師として名を馳せることになりますが、そこから彼女の運命は一変します。

ネットの闇に潜む嫉妬と不安

さやかが急速に支持を受ける中で、古参のファンたちから嫉妬の目に晒され、盗作疑惑をかけられるという過酷な状況に直面します。SNS上では「トレパク」と呼ばれる盗作の嫌疑が錯綜し、それに対する過剰な反応は、さやかを精神的に追い詰めていきます。まるで飢えた犬のように、その攻撃はエスカレートしていき、彼女のメンタルは崩壊の危機に。

様々な視点からの問題提起

著者の小宮は、実際に「トレパク冤罪」という問題を体験した人々の声をもとに物語を構築しました。彼女は、推し活の喜びと同時にその裏に潜む嫉妬心や攻撃性が引き起こす事態が、どれほどの苦痛を伴うかを描きたいと思ったと語っています。この作品は、単なるフィクションに留まらず、SNS社会における暗い現実を照らし出しています。読者は、さやかの姿を通じて、共感や理解を深められることでしょう。

楽しみながらも注意が必要な推し活

推しを応援する楽しさの中には、時に嫉妬や争いが潜んでいます。この作品は、新しい趣味を持ち始めたばかりの人々に向けて、楽しむことと同時に、その魅力的な世界に潜むリスクについても警鐘を鳴らしています。「楽しく理性的な推し活」を心がけ、他人との関係に注意を払う必要があると訴えかけているのです。

デザインへのこだわりと著者の思い

書籍の挿絵や表紙デザインには特に工夫が凝らされています。主人公夫婦の関係を象徴するイラストとともに、ミステリアスな雰囲気を出すことで、読者の関心を引きつけます。小宮は、SNSが苦手な自分にとって、この作品を書くことが非常に大きな挑戦だったと振り返りますが、その経験が読者に伝わるよう多彩な視点を持ってシナリオを進めたとのことです。