世界最速のデータベース「劔」とは
日本電気株式会社(NEC)と株式会社ノーチラス・テクノロジーズが共同で開発したリレーショナルデータベース管理システム「劔(Tsurugi)」が、ついに姿を現しました。このシステムは、次世代のハードウェア環境に最適化されており、特に処理性能において世界最速水準を誇ることが大きな特徴となっています。
劔の特性と性能
劔は、32コア以上のハードウェアで、その処理性能は驚異の456万TPSを実現。さらに219ナノ秒というレスポンスタイムを誇ることで、従来のデータベースとは一線を画す存在となりました。これにより、バッチ処理とリアルタイム処理を同時に行うことが可能となり、例えばカメラから取り込んだ画像データをリアルタイムに解析できるようになります。このような高性能の実現は、大規模データの迅速な処理が求められる昨今において、非常に有意義な技術です。
背景と開発の経緯
現在、情報産業を支えるデータベースは多くが中央演算処理装置(CPU)やメモリーの進化に合わせて進化してきましたが、管理ソフトウェアの多くは従来のハードウェア性能を前提に設計されています。このため、高性能なハードウェアを用いても、思うようにデータ処理が効率的に行えないという課題が存在しました。そこでNECとノーチラスは、NEDOの委託事業として新たな視点からの開発を進め、劔の誕生につながりました。
実運用での評価と検証
劔の開発においては、限定された環境だけでなく、実運用下での検証も行われました。その結果、例えば人流解析やGISアプリケーション、業務系バッチ処理などにおいて、劔が持つ高性能の有効性が確認されました。また、劔は分散型のアーキテクチャを有し、あらゆるコンポーネントが効率的に連携する設計がなされています。このことが、データの記録や処理の高速化を実現しています。
劔の技術構成
劔は、以下の4つのコンポーネントから成り立っています。これらは互いに連携し、効率的なデータ処理を支えます。
- - アプリケーション基盤(Tateyama): 劔内部のサービスライフサイクル管理を行います。
- - SQL実行エンジン(Mizugaki): SQLからの分散処理用実行計画を生成します。
- - トランザクションエンジン(Shirakami): データの一貫性を保つための並行性制御を行います。
- - ログデータストア(Limestone): 非同期でのログ書き込みを行う役割を果たします。
今後の展望
劔は2023年7月10日にアーリーアクセス版が公開され、その後、9月にはオープンソース版も提供される予定です。コミュニティサイトではさまざまな情報が共有され、劔の活用事例も紹介されるため、多くのユーザーにとって魅力的なプラットフォームとなるでしょう。さらに、劔に関連した書籍も刊行される予定があり、より多くの人々にこの革新的な技術を知ってもらえる機会が増えています。
このように、劔は日本の情報産業の競争力向上に寄与する重要なプロジェクトであり、今後も注目されることでしょう。