結婚の経済学:行動分析が解き明かす日本の未来
結婚行動の経済分析
はじめに
日本は急速に少子化が進行し、未婚率も上昇しています。これらの背景には、結婚に対する経済的要因が深く関与していることがわかっています。内閣府の経済社会総合研究所が策定した「経済分析第211号」では、結婚行動に関連する複数の経済的要因を詳細に分析し、今後の政策提言を行っています。
経済分析第211号の概要
この号では、「結婚行動の経済分析」に関する特集が組まれており、専門家による様々な論文を通して、日本の結婚市場の現状とその改善策が提案されています。特に、結婚相手を選ぶ際の要因や、独身者への支援策、既婚者の選択基準などが取り上げられています。
結婚候補者の存在確率
鈴木 亘教授と八代 尚宏教授による研究では、独身者を対象にしたアンケートを基に、結婚候補者のマッチング状況を数値的に把握しました。このデータにより、結婚市場における男女のマッチング確率を算出し、全体の成立率はわずか3.8%であることが明らかになりました。また、女性が求める条件に対して男性がどれだけ合致するかを示す「人気率」が女性の方が高い傾向が見られました。これによって、女性の方が結婚市場での交渉力を持っていることが伺えます。
結婚支援策とその影響
次に、独身者に向けた結婚支援策についてのコンジョイント分析が行われました。この研究では、収入の向上や住居費の支援が結婚選択確率を高める要因であると示されました。特に、住居費支援はコストパフォーマンスが高いことが特徴です。婚活を促進させるためには、所得水準が高い層だけでなく、様々な層への支援が必要です。
結婚決定要因の比較
さらに、既婚者を対象にした研究では、配偶者の雇用状況や家事参加が結婚決定に与える影響が分析されました。女性は安定した所得や正社員雇用を重視し、逆に男性はそうした要因にあまり依存していない傾向が出ました。この性差は、結婚観や役割意識の違いを如実に反映しています。
学歴の非対称性と結婚行動
内藤朋枝准教授は、男女の学歴差が結婚行動に与える影響についても考察しています。女性の高学歴化が進む一方で、未婚男性の低学歴傾向とのミスマッチが結婚意欲を阻害していると指摘されました。これは日本社会が持つ伝統的な役割期待が影響を与えていることを示唆しています。
結婚前同棲の影響
同棲を経験することで、結婚後の関係性がより均等になる可能性があるとの研究も行われました。最近のカップルの25%が結婚前に同棲をしており、同棲経験が結婚生活に良い影響を与えることが示されています。
職場の支援と結婚意向
内閣府経済社会総合研究所の調査データを元に、職場の両立支援が結婚行動に与える影響についての研究も行われました。特に育児休業制度が整った職場では結婚確率が高まるという結果が得られています。
将来の不確実性と結婚
最後に、将来の所得や雇用不安が結婚の意思決定に与える影響についても詳細な分析がなされています。男女ともに失業リスクが高まることで結婚意欲が低下することがわかりましたが、この不安を解消する支援が今後必要であるとの結論が導き出されています。
結論
内閣府の経済分析第211号は、日本の少子化に対する包括的なアプローチが必要不可欠であることを示しています。結婚を取り巻く経済的要因を明確にし、適切な政策を講じることが、今後の少子化問題の解決につながることが期待されています。