新たな時代を迎えた広告審査
広告業界に新たな風が吹いています。株式会社EdgeXと小林製薬株式会社が共同で開発したAIエージェント「ヤッキくん」が、その中心的な役割を担うことになりました。このプロジェクトは、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)や医薬品、医療機器等の安全性や有効性を確認するための法律(薬機法)に基づく広告審査を効率化し、品質向上を目的としています。
共同開発の背景
2024年度国内インターネット広告費は前年対比109.6%という成長を示しており、広告審査の業務がかつてないほど重要視されています。しかし、その一方で、景表法や薬機法の改正が進み、企業が審査しなければならない案件数も増加しています。特に、小林製薬の広告審査担当部門においては、年間の広告審査件数が直近数年で3倍に達し、そのうちWeb広告の割合も20%増加しました。このように、業務の負荷が高まる中で、広告審査の効率化が急務とされています。
ヤッキくんの役割と特徴
新たなAIエージェント「ヤッキくん」は、毎日の広告審査業務の中で必要なガイドラインや自社ルールに従いながら、製品パッケージやWebサイトの説明文をチェックする役割を果たします。AIによる安定した精度を誇る「ヤッキくん」は、単にデータを解析するのではなく、製品情報と広告表現の整合性を判断します。それにより、業務負担の軽減とともに、審査の質を高めることが可能となります。
このシステムは、テキストデータに限らずPPTやExcel、Word、PDFなどの多様なデータ形式や画像などにも対応しています。加えて、AIは独自の学習機能を持っており、時間をかけて業務に特化したデータを習得させることができます。これにより、小林製薬の製品に関連する複雑な情報も正確に捉えられ、効率的な審査が実現されます。
研究開発のプロセス
約1年間にわたるPoC(概念検証)活動においては、EdgeXと小林製薬の間でプロジェクトチームが設立されました。小林製薬が長年蓄積してきた自社規則やデータを整備し、それを「ヤッキくん」に学習させるプロセスを通じて、実務を行う担当者が実際にAIを使用し、チェックの精度向上を図りました。定期的な会合を通じて課題に対応し、AIのプロンプトの改修やデータ管理の改善が行われました。これは、広告表現においてどの表現が適切かを判断するための重要なステップです。
今後の展望
EdgeXと小林製薬は2026年度以降も共同開発を続け、より一層の業務効率化と審査精度の向上を目指します。製品開発を担当する部門においても、広告作成時の早期チェック機能を導入する予定です。また、医薬品や食品カテゴリーへの展開も視野に入れ、小林製薬の魅力ある広告を支えるための仕組みを構築していく計画です。
双方の期待と感想
小林製薬の品質安全保証本部では、長年の課題であったAIによる広告審査の効率化が実現できると期待されています。このプロジェクトは、単に業務の効率化を図るだけでなく、蓄積されたノウハウを活かし、全社員が活用できる形でのAI活用を促進することが重要なテーマと言えるでしょう。
EdgeXの取締役である板野氏は、この共同ほがプロトタイプを試した際に、小林製薬の指摘と一致する結果が得られ、強い可能性を感じたと語っています。このような成功体験が今後のAI開発における一つのモデルケースとなり、他の業界にも広がることが期待されます。
「ヤッキくん」は、広告審査のプロセスを大きく変える可能性を秘めており、未来の広告業界において重要な役割を果たすことでしょう。