越境EC事業化の現状と課題
近年、EC(電子商取引)の法人化が進む中、越境EC(国境を越えて行うEC)は特に注目を集めています。ディーエムソリューションズ株式会社が実施した「越境EC事業化にあたっての意識・実態調査」では、EC事業者1,000名の意見を集め、越境ECに取り組む上での課題や予算の実態について詳しく分析されました。
調査目的と方法
この調査は、EC事業者に対する越境ECの事業化に向けた期待値や進出先国、課題、運用体制などを確認するために行われました。調査対象は、20代から70代までの男女で、全国のEC事業を運営している担当者や責任者1,000名です。調査期間は2024年11月25日から28日まで、インターネットによるアンケート形式で実施されました。
越境ECへの参入状況
調査において、約7割のEC事業者がすでに越境ECに取り組んでいることが明らかになりました。具体的には、「既に複数の国で実施」と答えた事業者が25.1%、「一国で実施」が23.6%、また「直近での実施に向けて進行中」が17.4%という結果です。越境ECは、国境を越えて商品を販売できる大きなチャンスである一方で、言語や物流、法規制など、国内ECとは異なる課題が存在します。
直面する課題
越境EC事業化に向けた課題として、最も多く挙げられたのは、「進出先国の言語対応」(42.4%)で、次いで「海外発送用の物流体制の構築」(38.0%)、「進出先国の法令対応」(37.5%)と続きます。このことは、言語の障壁が顧客対応やマーケティング、サイトの翻訳に影響するため、事業者にとっての課題として浮上していることが示されています。
越境ECの経験者487名を対象に分析を進めると、「進出先国の言語対応」が50.3%、物流体制の構築が46.8%と、経験者にとっても重大な課題となっていることがわかります。このように、越境ECの実行の難しさは、事業者の想定を上回る場合が多数存在することが予想されます。
物流における特異な課題
越境ECの物流に焦点を当ててみると、事業者が感じる最大の課題は「通関手続きなどの書類発行業務」(47.3%)であることが示されました。海を越えるにつれ、国内での配送とは異なる課題が浮上するため、これが実務上の煩わしさをもたらしています。
初期予算の実情
越境EC事業を行う企業の初期年間予算は様々ですが、100万〜500万円が主流であり、中には2,000万円以上を投じる企業もあることが明らかになりました。初期投資が低い企業は、まず小規模でスタートし、徐々に事業を拡大する傾向が強い一方で、大規模に投資する企業は市場シェアを早期に獲得しようとしています。
撤退基準に関するタイミング
調査の最後では、越境EC事業開始からの撤退・継続判断のマイルストーンについて質問したところ、76.7%の事業者が開始から2年以内に判断すると回答しました。特に約半数が1年から1年半の間に判断していることから、越境EC事業が短期間での成果を求められる性質を持つことが浮き彫りとなりました。
まとめ
越境ECは、国際市場に進出するための新しい手段として多くの事業者に注目されていますが、それに伴う課題も多岐にわたります。特に言語や物流の問題が顕著であり、企業はこれらを解決するための情報収集や、支援サービスの活用が必要です。この調査結果から、今後も越境ECの環境が改善され、より多くの事業者がグローバルに成長するための契機となることが期待されます。
本調査の詳細を知りたい方は、ぜひレポートをダウンロードしてご覧ください。