フラッシュメモリモジュールの革新
キオクシア株式会社が、ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業の一環として、次世代通信に向けたフラッシュメモリモジュールの試作に成功しました。このモジュールは、5テラバイト(TB)という大容量を持ち、1秒あたり64ギガバイト(GB/s)の広帯域を実現しています。この革新は、データ処理における遅延の削減と、リアルタイム解析の実現に貢献することが期待されています。
ポスト5G時代の要件
ポスト5Gや6Gの時代には、無線ネットワークの高速化と低遅延化、さらには多数の同時接続が必要とされています。このような環境では、ユーザーがデータをクラウドサーバーに送信する際に発生する遅延が問題となり、リアルタイムでのデータ処理が難しくなります。そこで期待されているのが、データ処理をユーザーに近いエッジで行う「モバイルエッジコンピューティング(MEC)」サーバーです。MECサーバーの普及により、各種産業でのスマート化やデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されることでしょう。
メモリモジュールの技術的な進化
キオクシアが開発した新しいフラッシュメモリモジュールでは、従来のDRAMと比較して、容量と帯域のトレードオフを解消するために、新たなデイジーチェーン接続を導入しました。これにより、フラッシュメモリの数が増えても帯域が劣化することなく、大容量化が可能となっています。また、128ギガビット毎秒(Gbps)という高速通信技術を用いており、これは次世代の通信基盤に欠かせない要素です。
デイジーチェーン接続
デイジーチェーン接続とは、メモリモジュール内のフラッシュメモリを直接バスで接続するのではなく、コントローラを介して数珠つなぎに接続する方式です。これにより、フラッシュメモリの数が増加しても帯域が劣化せず、従来よりも大容量化を実現しています。
高速・低電力通信技術
通信においては、従来のパラレル接続ではなく、差動信号を用いた高速シリアル通信を採用しています。さらに、PAM4(4-level Pulse Amplitude Modulation)の多値変調方式を採用することで、128Gbpsでの高速かつ低電力のデータ通信を実現しました。この技術により、従来の通信容量を大幅に超える性能を発揮します。
フラッシュメモリの性能向上
フラッシュメモリの性能も向上しました。連続アクセス時の遅延を最小限に抑えるために、事前にデータを読み出す「フラッシュプリフェッチ技術」を開発しました。これにより、メモリコントローラとフラッシュメモリ間のインターフェースの信号低振幅化やゆがみ補正・抑制技術も適用されています。
今後の展望
キオクシアは、今回の成果を社会に実装し、エッジでのIoTやビッグデータ解析、高度なAI処理に向けた市場動向に迅速に応じていく方針です。この革新的なフラッシュメモリモジュールは、ポスト5Gの情報通信システムにおける中核技術としての役割を果たし、日本の通信インフラの強化に寄与することが期待されています。特に生成AIなど新たな市場のニーズに応えて早期の実用化が進むことが望まれています。