従業員エンゲージメントと企業価値の関係
リンクアンドモチベーションの「モチベーションエンジニアリング研究所」は、2023年のデータを基にした調査結果を発表しました。この調査では、従業員のエンゲージメントと投資指標の関連性について分析が行われ、企業価値の向上にどのように寄与するかを明らかにしました。
調査の背景と目的
2023年3月期から有価証券報告書の改訂により、上場企業における人的資本情報の開示が義務付けられるようになりました。この中で、内閣府が策定した人的資本可視化指針では、企業の価値向上に寄与するとされる19項目の一つとして「エンゲージメント」が挙げられています。特に、低迷している企業の改善策が求められる中、人的資本への投資が注目を集めています。
しかし、人的資本への投資と企業の価値向上の関係を示す具体的なデータはまだ少なく、より詳細な定量的分析が必要とされています。そこで、本調査は、エンゲージメントを重要な要素として、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投資資本利益率)、PBR(株価純資産倍率)との関係性を深掘りすることを目的としました。
調査概要
- - 調査期間:2023年1月~12月
- - 調査機関:株式会社リンクアンドモチベーションのモチベーションエンジニアリング研究所
- - 調査対象:従業員エンゲージメントサーベイ実施企業76社(東証スタンダード・プライム上場)
- - 分析方法:エンゲージメントスコア(ES)とエンゲージメント・レーティング(ER)、及びROE、ROIC、PBRとの相関分析を実施しました。これらの企業財務指標は、2025年5月時点の有価証券報告書から算出されています。
調査結果の分析
調査の結果、エンゲージメントに関する関心が高まっており、対象企業数は62社から76社へと増加しました。これは企業がエンゲージメントの重要性を認識する兆しとして受け取られます。
また、ESとROEおよびPBRの間に正の相関が見られました。高いESを持つ企業は、ROEやPBRの数値も高い傾向がありました。一方、ESとROICの間には弱い正の相関が確認されました。具体的なデータとして、ERがDランクの企業はPBRが1を下回るのに対し、Aランクの企業ではその83%がPBRが1を超えていました。これは、エンゲージメントの高低が企業の投資指標に直接的な影響を及ぼしている可能性を示唆しています。
課題への考察
今回の研究結果から、エンゲージメントがROEやPBRに与える影響について定量的な示唆が得られましたが、業界や市場の動向によって指標が変動するため、因果関係を明確に証明することは難しいとされています。しかし、前回の調査より多くの企業を対象に行ったことからエンゲージメントが企業価値に寄与する可能性は高まっていると言えるでしょう。
エンゲージメントへの関心が高まっているものの、単なる開示のために取り組む企業も多いのが現実です。エンゲージメント向上を企業価値向上の一環として捉え、長期的な視点で取り組み続けることが今後の重要な課題と言えるでしょう。
調査結果の詳細については、
こちらから確認できます。
企業情報
- - 会社名:株式会社リンクアンドモチベーション
- - 代表者:小笹 芳央
- - 資本金:13億8,061万円
- - 証券コード:2170(東証プライム)
- - 本社所在地:東京都中央区銀座4-12-15歌舞伎座タワー15階
- - 設立年:2000年4月
- - 事業内容:組織開発、個人開発、マッチング事業、ベンチャー・インキュベーション