新たな防災システムの提案
2025年6月20日に東京都中央区のX-NIHONBASHI TOWERで行われたセミナー「衛星データ×気象データで切り拓く新時代の防災とは」。この場で、株式会社スペースシフト、株式会社ハレックス、そして株式会社Tellusの三社が共同で進めた実証実験に基づくトークセッションが繰り広げられました。
主催者の一社でもあるTellusは、衛星データを活用した新たな防災システムについて、これまでのアプローチとは異なるビジョンを提示しています。特に重要な役割を果たしたのは、衛星タスキング機能です。Tellusはこの機能を通じて、迅速なデータ取得を実現するプラットフォームを構築しました。
実証実験の概要
今回の実証実験は、ハレックスが提供する気象アラートメールをトリガーに、スペースシフトが生成AIを活用して観測対象領域(AOI)を自動生成し、Tellusが保有するオンデマンド衛星タスキング機能を介して、ASNARO-1およびGRUS衛星への撮影依頼を行ったものです。この取り組みにより、各社はデータの取得を効率化し、迅速な判断を支援する仕組みを作り出しました。
COO牟田のビジョン
トークセッションに登壇したTellus COOの牟田梓氏は、衛星タスキング実装における現状の課題を指摘しました。「プロバイダーごとにリクエストの形式や仕様が異なる」とし、そのために「設定パラメータの標準化と柔軟な最適化が必要である」と語りました。この問題に対して、生成AIの導入が有効であることを示し、「デフォルト設定の迅速なブラッシュアップや自動最適化が期待できる」と期待を寄せています。
さらに、データの共同利用が進むことにより、ユーザーは低コストでサービスを享受でき、プロバイダーも利益を得られるエコシステムの必要性についても議論を展開しました。これは持続可能なデータ流通モデル構築の重要性を強調するものでした。
災害時の対応と今後の展望
災害時には、緊急観測体制についても具体的な方策を検討しており、「防災科研などの公共プラットフォームとの連携を進めていく」と牟田氏は語りました。公共と民間の協力が新たな有事対応システムの構築に貢献することが期待されています。
現在開発されているタスキングシステムは、2025年秋からの導入を予定しており、災害対応だけでなく、広範な用途に対応するシステムへと成長させたい意向も示しました。
「衛星データの民主化」を目指して
Tellusは「衛星データの民主化」を掲げ、誰もが衛星データを積極的に活用できる社会を目指しています。今回の実証実験はその一歩であり、衛星情報や生成AIという先端技術を用いた新たな防災システムの可能性を示しました。
今後もTellusは衛星データプラットフォームとして、衛星データを活用した安全で安心な社会の実現に寄与していく所存です。
会社について
株式会社Tellusは2021年に設立され、宇宙データ技術に特化した企業です。「宇宙産業を次の商品基幹産業へ」という使命のもと、衛星データプラットフォーム「Tellus」を提供しています。多様な44種類の衛星データと4種類の地上データを扱い、その規模は日本最大級です。現在、41,739名の利用者が登録されており、年間53万シーン以上のダウンロード数を記録しています。今後もTellusはITとAIの力を活かし、国内外で「Tellus」の展開を進め、宇宙情報産業を成長させていく所存です。