障がい者が講師となる新たな社会理解の試み
近年、NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクトが取り組む「Base」という就労継続支援B型事業所において、障がい者自身が講師としての活動に挑戦しています。全盲で車椅子を利用する利用者や弱視の利用者が講演を行い、視覚障害への理解を促進。社会へのインパクトを与えるこの活動の詳細をご紹介します。
講演の取り組み
この活動は、全盲の利用者が自ら営業活動を行い、彼らの体験を通して障がいの理解を深めることを目的としています。今年の夏、全盲・車椅子の谷口さんと弱視の岩下さんが講演を行いました。まずは7月10日に、聴覚支援学校で中高生を対象に実施した講演です。この講演は彼らが初めて獲得したもので、春からの準備を経て実現しました。講演当日には、通訳者による通訳が行われ、参加者が楽しめるよう工夫が凝らされました。
その後の7月31日には、特別支援学校で教職員向けの講演を行いました。ここでは視覚障害者に対する支援方法や、街中での対応について、実体験を交えた具体的な内容が伝えられ、参加者の反響も大きかったといいます。教育に関わる方々が障がい理解を深める素晴らしい機会となったようです。
参加者の声
講演を受けた教職員からは、「実体験に基づいた講演内容がわかりやすく、中でも視覚障害の個人差について詳しく学べた」といった感想が寄せられました。また、参加者は視覚障害者の暮らしや具体的な支援方法を知ることで、より現実的な理解を得られたと感じているようです。
講師である谷口さんは、「聴覚支援学校の講演では手話に挑戦し、新たな学びを得た」とその喜びを語り、岩下さんも「生徒とのインタラクションを楽しみにしている」と感想を述べています。支援員たちも、二人が実際に体験を通して教え、さらには参加者とのコミュニケーションを図ったことに大きな意味があったと振り返りました。
今後の展望
今後、須磨ユニバーサルビーチプロジェクトは、福祉事業所や学校、企業などからの講演リクエストを歓迎しています。特に谷口さんは、全盲の利用者だからこそ語れる経験を通じて、障がいへの理解を広めるために、営業活動を精力的に行っています。彼らの意欲的な取り組みは、障がいスター理解の促進だけでなく、共生社会の構築にも繋がっていくことでしょう。
法人概要
NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクトは、誰もが楽しめるユニバーサルデザインのビーチ作りを目指し、2017年に設立されました。神戸市にあるこの法人は、視覚障害者や高齢者、小さなお子さんを含むすべての人々が楽しめる場所作りを進めています。2023年度には、ブルーフラッグベストプラクティス賞で世界第2位を受賞し、その活動は多くの人々に広がっています。福祉事業や教育現場を活用した多様な講演内容を提供し、全盲や弱視の当事者が語る経験を通じて、多くの人々に障がい理解を深めていくことが期待されています。
今後も、共生社会の実現に向けた取り組みや、全国に広がるイベントでのアプローチを通じて、さまざまな立場の人々が一緒に楽しむことができる社会を目指していきます。