宿泊業界におけるシニア採用の現状
日本の宿泊業界は今、人手不足に直面しています。特に、若年層の人材獲得が大きな課題となりつつあります。しかし、そうした中でも、50代以上のシニア層を受け入れる動きが広がっています。
1. シニア採用の背景
株式会社ダイブとその子会社である宿屋塾は、宿泊業における50代・60代以上の人材についての共同調査を実施しました。この調査によると、全国約4,600の施設の約60%が50代以上のシニア人材を既に採用していることが明らかになりました。特に、宿泊業界では2025年に施行される改正高年齢者雇用安定法によって、企業は65歳までの雇用を確保することが義務化されることから、シニア層の活用の重要性が増しているのです。
2. シニア採用の実態
調査の結果、シニア層が採用される理由としては、スキルや意欲が評価されていることが多いとされています。具体的には76.9%の施設が、シニア層に即戦力として期待している経験やスキルを評価した結果、採用に踏み切ったと回答しました。さらに、人口が高齢化する中で、安定した働き手としてシニア層が求められる傾向にあることもわかりました。
一方で、依然として若手人材を優先したいという施設も多く、健康面や体力に対する懸念もあることが明らかになっています。これらの背景は、シニア層の採用に慎重になる要因となっています。
3. シニア層が担う業務
シニア層が主に担当する業務は、調理、フロント業務、客室清掃など多岐にわたります。特に調理業務は26%を占めており、シニア層の豊富な経験が生かされています。また、地域密着型のホテルでは地元シニア層が安定した働き手として活躍する姿が見受けられます。これは、業務の多様性とシニアの経験の価値を再評価する良い例と言えるでしょう。
4. 今後の課題
しかしながら、シニア層の採用が進む一方で新たに採用を検討する施設は14.6%にとどまり、採用の検討を行っていない施設も21.2%ほどあります。これは、シニアの業務に対する具体的なイメージが持てないという施設の声も影響しています。業務の可視化について、採用側に対する情報提供や成功事例の共有が求められるでしょう。
5. シニア採用に向けた施策
宿泊業界全体の採用や定着に向けて、各施設では「労働環境の改善」「採用の多様化」「従業員満足度の向上」といった具体的な施策が求められています。具体的には、シフト固定化やフレックスタイム制度の導入、外国人採用の強化などさまざまな取り組みが見受けられます。
結論
宿泊業界におけるシニア採用は進展を見せていますが、まだまだ課題も多く残されているのが現実です。今後の業務の可視化や環境改善が実を結べば、更に多くのシニア層が活躍し、業界の人手不足解消につながることが期待されています。各施設がそれぞれの状況に応じた柔軟な採用・定着策を進めていく必要があるでしょう。