環境対応VLCCの建造計画
出光興産株式会社とそのグループ会社である出光タンカー株式会社は、環境に優しいVLCC(大型原油タンカー)を2隻建造することを決定しました。竣工は2028年および2029年を予定しており、海運業界における脱炭素化を加速させる計画です。
環境に配慮した設計
新たに建造される本船は、メタノールと重油の両方を燃料とすることが可能な「二元燃料焚き」として設計されています。この技術の採用により、効率的な燃料使用が実現され、環境への影響が軽減されます。
さらに、本船には、主機のプロペラ軸の回転を利用して発電する「軸発電機」が搭載されています。この装置により、通常よりも少ない燃料を使用することが可能となり、同時にCO₂排出量を削減することが期待されます。また、世界初となる風力推進補助装置「ローターセイル」も2本装備されており、自然の力を利用した効率的な航行が可能です。
CO₂排出量の大幅削減
国際的な規制である「EEDI」(エネルギー効率設計指標)フェーズ3では、年間のCO₂排出量を大幅に削減することが求められていますが、今回建造される環境対応VLCCはその基準値を超え、40%以上の削減を実現する見込みです。特に、メタノールは化学製品の原料だけでなく、CO₂排出削減のためのエネルギー源として注目されています。
メタノールの利点
現状では、船舶の燃料として重油が広く使用されていますが、メタノールに切り替えることで、窒素酸化物(NOx)を最大80%、硫黄酸化物(SOx)を最大99%、二酸化炭素(CO₂)を約15%削減することが可能になります。また、バイオメタノールや再生可能エネルギーから得られる合成メタノール(e-メタノール)を利用することで、さらに持続可能な航行が実現されることが期待されています。
歴史あるタンカー会社の新たな挑戦
出光タンカーは、1962年に当時の世界最大サイズのタンカー「日章丸」を建造し、1966年には20万トンを超えるVLCC「出光丸」をも創出した実績を持つ企業です。今後、2隻の環境対応VLCCに加え、2026年以降には定期船4隻の環境対応化も予定しており、計6隻の新型タンカーが導入される予定です。それにより、海運業界における持続可能な未来の実現を目指しています。
今後の展望
出光興産は、今後も出光タンカーと連携し、海運業界の環境負荷低減に貢献していく方針です。持続可能エネルギーの利用促進とともに、資源の効率的な利用を進め、次世代に向けたクリーンな海運システムの確立を目指しています。これにより、未来の海運業界をリードする存在となることでしょう。