花が天候に応じて向きを変える仕組みとその重要性を解明

花が天候に応じて向きを変える仕組みとその重要性

近年、花が天候によって向きを変える特性が注目されています。この現象について、京都大学生態学研究センターの工藤洋教授や福井市自然史博物館の柴田あかり学芸員を中心とする研究チームが、そのメカニズムと意義を解明しました。研究の成果は、2025年5月3日に国際学術誌「Nature communications」に発表されました。

研究の背景

研究グループが対象としたのはアブラナ科の「ハクサンハタザオ」（Arabidopsis hallerisubsp. gemmifera）という植物です。この植物は晴れた日には花が上向き、雨の日には下向くという特徴があります。晴天時に花が上を向くのは、花柄（茎の部分）が青色光の方向に伸びるためです。この向きは昆虫を引き寄せ、その結果、花粉の運搬が促進されるようになっています。一方、雨の日に花が下を向くのは、低温や青色光の弱まりが影響しており、雨粒から花粉を保護する役割を果たしていることが研究で示されています。

研究手法と成果

研究では、兵庫県多可郡の自然集団において、花の向きを決定する環境要因を調査しました。特に光、温度、体内時計が影響を及ぼしていることが明らかになりました。また、遺伝子発現解析を行うことで、花の向きに関連する遺伝子の働きを解明しました。

具体的には、花が上を向く際には花柄の下部でオーキシン関連の遺伝子発現が高まることが分かりました。一方、下を向くときには上部での遺伝子発現が高まるため、花柄の偏った細胞伸長により花の向きが変化することが分かりました。さらに、この知見をもとに青色光を使った実験を行い、花が向きを変えることが花粉の流失を抑えることや種子の形成に寄与することも確認されました。

研究の意義と今後の展望

本研究は、天候による花の向きの変化が植物にとっての適応的な特性であることが分かりました。昆虫にとっての魅力を高める一方で、悪天候から花の受粉を守る役割も担っています。これからもメカニズム研究と実験を組み合わせ、植物の興味深い特性についてさらに解明を進める考えです。

研究プロジェクトの支援

この研究は日本学術振興会や科学技術振興機構のCRESTからの支援を受けて行われました。研究は京都大学生態学研究センターで実施されています。今後の研究成果も楽しみです。

お問い合わせ

福井市自然史博物館（柴田）
Tel：0776-35-2844
E-mail：[email protected]

この現象は、植物が自然環境にいかに適応しているのかを象徴的に示しており、植物生態学に新たな視点を提供する重要な研究です。私たちの周りにはまだまだ解明されていない自然の仕組みがたくさんあります。ぜひ、この機会に自然を再検討してみてはいかがでしょうか。