高齢患者の食生活支援を図る「訪問嚥下リハビリ」とは
近年、高齢化に伴い、医療現場での摂食嚥下の重要性が増しています。特に、高齢患者の退院後、適切な食事ができていない現状が浮き彫りになっています。そうした中で、株式会社メディヴァが水海道さくら病院と共に構築した訪問嚥下リハビリと栄養指導の仕組みは、特に注目されるべき取り組みです。
高齢患者と嚥下リハビリ
水海道さくら病院では、「口から食べて元気になってもらう」ことを目指し、入院患者に対して嚥下リハビリと栄養指導を実施しています。しかし、退院後に患者が適切な食事ができているかという実態は厳しいもので、約40〜50%の患者が指導内容を守ることができていないという調査結果が示されています。これは、特に高齢者では、適切な食形態や食事介助ができていない場合が多く、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まるという深刻な問題を抱えています。
退院後の訪問支援
医師兼コンサルタントである久富護氏が率いるプロジェクトでは、高齢者施設の患者および在宅患者に対し、訪問リハビリと訪問栄養指導を行う新たな仕組みを構築しました。在宅においては、まず医師や看護師が患者の状態を確認し、必要に応じて言語聴覚士や管理栄養士が訪問して指導を行います。これにより、患者に合った食事形態や介助の方法を提案し、実施することができます。
一方、施設に入居している患者に対しては、制度の制約から訪問リハビリが難しい場合が多いため、退院後に看護師が訪問し、言語聴覚士が同行してリハビリを実施します。これにより、患者の状態を確認し、指導内容が守られていない場合には、施設の職員に再指導を行う仕組みを確立しています。
課題と今後の展望
この取り組みによって、水海道さくら病院では誤嚥性肺炎を引き起こす患者が減少するなど、成果が表れています。しかし依然として、訪問指導において言語聴覚士単独での訪問が認められていないため、人件費の確保が課題とされています。今後も、この制度を改善する働きかけを続け、訪問リハビリと栄養指導の充実を図っていく必要があります。
まとめ
高齢者の健康増進のためには、医療機関における退院後の支援が欠かせません。メディヴァと水海道さくら病院が展開する訪問嚥下リハビリと栄養指導は、その一つの解決策として位置づけられ、高齢者がより良い食生活を送るための一助となるでしょう。エビデンスに基づいたこの取り組みが、多くの高齢患者の生活を支え、豊かにすることを期待したいものです。