京都マイクロコンピュータがRISC-Vに対応した新プラットフォームを発表
京都マイクロコンピュータ株式会社(KMC)は、全国で推進されているNEDOの「省エネAI半導体及びシステムに関する技術開発事業」に基づき、RISC-Vに対応したリアルタイム開発プラットフォーム「SOLID」バージョン4.0の新たなリリースを行いました。このプラットフォームは、AIエッジコンピューティングの産業応用を加速するための重要なステップとして位置づけられています。
「SOLID」は、ソフトウェア開発環境とランタイムソフトウェアが連携し、バグの自動検出や分割開発機能などの高度な機能が備わっており、特に大規模な組み込みソフトウェアの安全な開発を可能にします。RISC-Vプロセッサへの対応により、既存のArm®プロセッサ向け開発環境に匹敵する使い勝手を提供し、新たにRISC-Vプロセッサの導入にかかる学習コストを大幅に削減することを目指しています。
RISC-Vプロセッサの可能性と日本市場の現状
RISC-Vは、オープンアーキテクチャであり、その特徴として命令セット仕様の公開が挙げられます。これにより、さまざまな用途に最適化されたプロセッサの設計が可能になります。特にIoTやAIエッジデバイスにおいては、高性能な計算処理を低消費電力で実現できるため、RISC-Vは非常に有望なソリューションとされています。しかし、日本市場ではこれまで大規模な組み込み機器への正式な利用事例は少なく、開発環境の整備が課題であるとKMCの調査からも示されています。
NEDOが進める「省エネAI半導体及びシステムに関する技術開発事業」では、KMCが国立大学法人東京科学大学やセイコーエプソン、株式会社デンソーなどのパートナーと共にこの課題に取り組んでおり、東京科学大学内にRISC-V設計拠点の構築を目指しています。このように、国や企業が連携してRISC-Vの普及に尽力する姿勢は注目に値します。
SOLID バージョン4.0の特徴
新たに発表された「SOLID」バージョン4.0は、全体としてリアルタイムOS、統合開発環境、コンパイラ、デバッガなどが連携した多機能なプラットフォームです。特筆すべきは、オープンソースのLLVM/ClangコンパイラにRISC-Vプロセッサ向けのコンパイラ・デバッガを開発し、メモリ破壊や配列の領域外参照といったバグを実行時に自動的に検出できる機能を備えている点です。これにより、安全かつ効率的なソフトウェア開発が実現されます。
さらに、RISC-Vプロセッサ向けのベアメタルソフトウェア開発環境を構築することにより、開発者は直感的なGUIを通じてMMU(Memory Management Unit)の設定を簡単に行うことが可能です。これにより、従来のように専門知識が必要とされていたプロセッサの設定を容易にし、開発時間を大幅に短縮することが期待されます。
未来への展望
KMCは、2025年に向けてSOLIDのさらなる機能向上に向けたバージョンアップサービスを開始予定です。今後は、ユーザーのニーズに対応する形で、RISC-Vプロセッサに向けた追加命令や機能の開発にも取り組んでいきます。特に、高度な技術が求められるIoTやAIエッジ市場での活用が期待されており、RISC-Vプロセッサの特徴を最大限に活かした柔軟で自由な設計が可能となるでしょう。
このような取り組みを通じて、KMCは業界の発展に寄与し、ユーザーが直面する開発環境の課題を解決し続けることを目指しています。