天皇の権力を再考する『日本政治思想史』
日本の政治において、天皇がいかに重要な役割を担っているかを探究する新著『日本政治思想史』が、2025年5月21日に発売される。この本は、政治思想史の第一人者である原武史氏が、長年の研究を基にした集大成とも言える一冊である。
天皇の影響力とは
戦後の新憲法では、天皇の政治的権力を否定する一文が存在すると同時に、歴史的に見れば、天皇は常に国政に対する影響を持ってきた。この矛盾を原氏は浮き彫りにし、特に天皇がどのように現代日本の政治に影響を及ぼしているかを解説している。本書は、天皇の存在が日本の政治を無視できないほど強く影響しているという事実を、様々な政治思想のレンズを通して明らかにする。
新たな視点「時間」と「空間」
本書の特徴は、従来の思想史に加え、「空間」と「時間」という新たな補助線を取り入れている点だ。これにより、これまで言説化されてこなかった日本独自の政治思想の本質に迫り、読者に新たな視点を提供する。また、特定の歴史的背景や地域性も考慮しながら、日本政治思想の多様性を紹介する。
目次から見える内容
目次を見てみると、魅力的な章が並んでいる。戦国時代の政治体制や国学、さらには明治維新における天皇の役割まで、幅広いテーマが扱われており、歴史と思想の交差点を深く掘り下げている。
1. 日本政治思想史とは何か
2. 空間と政治
3. 時間と政治
4. 徳川政治体制のとらえ方
5. 国学と復古神道
6. 明治維新と天皇
7. 街道から鉄道へ
8. 近世、近代日本の公共圏と公共空間
9. 東京と大阪
10. シャーマンとしての女性
11. 超国家主義と国体
12. 異端の諸思想
13. 戦後のアメリカ化
14. 戦後のソ連化
15. 象徴天皇制と戦後政治
これらのテーマは、単なる歴史の考察にとどまらず、日本の将来の政治を考える上での重要な示唆を与えるものとなる。
著者・原武史氏の想い
原武氏は、長年の研究を通じて「天皇が権力の主体であるという認識は、我々にとって重要な概念だ」と強調する。彼はまた、天皇制の存在が日本政治の枠組みをどのように形作ってきたのか、その問題提起を本書を通じて行っている。
書籍情報
本書は、新潮選書からの刊行で、定価は2,035円(税込)である。さらに2023年5月の発売に向けて、多くの読者が本書の内容に期待を寄せている様子が伺える。
このような政治思想の研究と再考は、過去の文脈から現代にかけて日本の政治的風景を明らかにし、将来を見据えるための糧ともなるだろう。『日本政治思想史』は、今後の日本社会における重要な議論の一部となるに違いない。