データとテクノロジーで未来の海を守る
和歌山県那智勝浦町が、慶應義塾大学SFC研究所およびアドソル日進株式会社とともに、海洋環境の保護と地域活性化を目的とした産官学連携協定を締結しました。この取り組みでは、宇宙衛星データやドローンからの情報を駆使し、地理情報システム(GIS)とAI技術を活用することで、海藻の生息状況を明らかにし、藻場の再生を目指します。
背景: 那智勝浦町の自然と課題
那智勝浦町は、豊かな自然に囲まれた地域であり、特に水産業が盛んです。しかし、近年の黒潮の動きによる海水温の上昇や磯焼けの進展が問題となっており、藻場の減少が深刻な影響を及ぼしています。これにより、水産資源の減少が懸念され、町の経済にも悪影響が及ぶ可能性があります。
そのため、那智勝浦町では2020年に「ゼロカーボンシティ宣言」を行い、持続可能な地域作りを推進しています。特に「藻場造成マスタープラン」を立ち上げ、藻場の整備や再生に力を入れることを決定しました。
M-NEXプラットフォームとは
M-NEXプラットフォームは、慶應義塾大学SFC研究所とアドソル日進が共同開発したデータ活用の基盤です。このプラットフォームは、神奈川県や東京都での実証を経て、持続可能なまちづくりや脱炭素社会の実現に向けた新たなモデルとして展開されています。今回の協定では、これまでの知見を海洋分野に適用し、藻場の再生やブルーカーボンの創出に取り組むことになります。
具体的な取り組み
協定の具体的な施策には以下のような項目があります。実施期間は2031年3月31日までの予定です。
1.
ドローンや衛星による海域観測: 広範囲にわたる海藻の状況を効率的に把握するため、ドローンや衛星を用いた観測を行います。
2.
GISとAIを活用したデータの可視化: 取得したデータをGIS上で管理し、海洋環境の変化をリアルタイムで可視化します。これにより、藻場の生息域や育成状況を正確に把握できるようになります。
3.
エビデンスの構築と活用: 藻場の経年変化をデータとして蓄積し、再生効果の検証を行います。これに基づいて、環境保全と地域活性化を結びつけた新たなビジネスモデルを模索します。
今後の展望
今回の取り組みを通じて、客観的で定量的なデータの収集・分析が実現します。これにより、地域の水産業の復活や、新しいビジネスチャンスが生まれることが期待されます。将来的には、このプラットフォームを他の分野、特に森林データなどへ応用し、より広範な持続可能なまちづくりを進める方針です。
各者の想い
那智勝浦町の堀町長は、協定の意義を強調し、データに基づく新たなアプローチで海洋環境を守ることが重要であると述べました。また、SFC研究所の厳名誉教授は、この取り組みが「海」への知見の拡張であると捉え、持続可能な社会を実現するための挑戦と位置づけています。アドソル日進の篠﨑社長は、サステナブルな社会の実現に向け、「海洋DX」の推進に全力を尽くす意思を示しました。
この共同プロジェクトが成功することで、那智勝浦町の藻場再生や地域活性化が進み、持続可能な未来を築く礎となることが期待されます。