調査報道の現場が直面する課題
報道機関の役割は、国の政策が地方でどのように受け入れられているのかを伝えることです。しかし、全国に点在する1,700以上の自治体の議論を把握するのは困難を極めます。特に地方の支局が縮小する中、全国の地方議会を常にウォッチすることはますます難しくなっています。これにより、多くの場合報道は「東京発」の情報に偏り、「現場での実情」が見えにくくなってしまっています。こうした構造的な課題を解消するために、Polimill株式会社が開発した「QommonsAI」が登場しました。
QommonsAIの概要
QommonsAIは、報道機関向けに提供される生成AIで、行政文書の横断検索を可能にします。このツールを使えば、記者は数週間かかることがある調査報道を、わずか5秒で始めることができます。例えば、特定の政策課題に関する議事録を迅速に検索し、必要な情報を瞬時に抽出できるのです。
効率的な情報収集
実際にQommonsAIによる検索がどれだけ迅速に行えるのか、いくつかの実例を見てみましょう。
実例① カスハラ対策の議論
一つ目の質問はカスハラ(カスタマーハラスメント)に関するものです。「自治体ごとの不当な要求の基準についての具体的な議論を抽出してください」という問いに対し、QommonsAIは5秒で回答を開始し、複数の自治体がどのような基準を設けているかを具体的に示します。このデータは、単なる数字や文面だけでなく、実際に現場で起こっている事例も含まれており、非常に生々しいものです。
実例② 学校閉校の議論
次に、「閉校が決まった小中学校に関する議事録から、喪失感に関する象徴的な発言を挙げてください」という質問に対しても、QommonsAIは過去の議事録から適切な発言を瞬時に抜き出します。このような情報を駆使することで、記者は現地取材に行くべき場所や人を的確に特定できるのです。
報道機関にとってのメリット
QommonsAIの導入により、報道機関は効率的に情報を集めることができ、現場の声を拾いやすくなります。たとえば、自治体が直面する具体的な問題や市民の反応などが的確に把握できるため、より深みのある報道が可能になります。
競争の激化
また、地域間の競争も取材素材として注目の的です。「ふるさと納税」の取り組みを巡り、自治体間での競争意識が強まっている様子が議事録から浮かび上がります。特に、返礼品や観光集客を巡って隣接する自治体がライバル視する様子は、地域経済の動向にも影響を与えるため、報道においても見逃せません。
技術と倫理的懸念
一方で、生成AIを使用する議会では「技術への不信感」や「倫理的懸念」が提議されることもあります。情報漏洩や著作権問題が話題になっている中、利用の際には注意が必要であり、QommonsAIもこのような指摘を真摯に受け止めているといえます。
結論
QommonsAIは、報道機関にとっての新しいインフラを提供するものであり、調査報道の業務効率を大きく向上させる可能性を秘めています。全国の自治体の情報を整理し、瞬時にアクセスできる環境を整えることで、より多くの実情を報じることが可能になるでしょう。これにより、報道の質が向上し、一般市民への情報提供の役割を果たすことが期待されます。これまでの情報収集の手法を変革するQommonsAIの今後に、ぜひ注目していきたいものです。