成田空港が挑む持続可能な未来
成田国際空港株式会社は、環境への取り組みを強化する一環として、『サステナブルNRT2050』を策定しました。この計画は、同空港から排出されるCO₂を減少させ、持続可能な社会の実現を目指しています。特に、航空機からの分別排出量が多く、脱炭素化が急務とされる中で、持続可能な航空燃料、略してSAFの導入を推進しています。
SAFの導入促進のための実証実験
成田空港では、SAFの原料となる「スイートソルガム」を周辺地域の騒音対策用地で栽培し、これを元にバイオエタノールを製造する実証実験を実施中です。具体的には、成田市荒海にある空港関連の土地約1,000㎡で行われています。これにより、地元の資源を活かした地産地消の体制が整いつつあります。
今後、多くのSAFの需要が見込まれる2030年以降を見据え、持続可能な原料の確保がカギとなります。これまで主に検討されていた廃食油の他に、新たな原料の確保も重要になってきます。スイートソルガムは、温帯地域の本州でも育成可能な作物の一つであり、糖を含む茎から得られる搾汁液を利用してバイオエタノールを生成できます。
地域との連携で脱炭素化を加速
成田空港では、名古屋大学や神戸大学、地元の農業法人HSSなど、多くの大学や企業と連携しながら、このSAF導入プロジェクトを進めています。名古屋大学では超大型スイートソルガム品種「炎龍」を用いた栽培・収穫の最適化を、神戸大学は搾汁液からのバイオエタノール製造技術の開発を進めています。また、地元農業法人HSSは、地域の特性を活かした育成の実績とノウハウを提供しています。
超大型スイートソルガム「炎龍」の特徴
今回使用するスイートソルガム「炎龍」は、大型植物として約5mも成長する力強い作物です。非食用であるため、食料品と競合せず、1回の作付けで年に2回の収穫が可能という利点があり、高い糖蜜収量性を誇ります。また、搾汁後の茎葉は家畜の飼料にも利用可能で、荒れた農地でも育成できるため、環境にも優しい作物です。
最終的な目標に向けて
今回のSAFを基盤に、成田空港周辺の市町や関係者とさらに密接に連携し、この取り組みを継続的に進めていく予定です。将来的には、地元でのスイートソルガムの栽培を拡大し、SAFの製造から使用までを地域内で完結させる地産地消モデルを構築することで、脱炭素化の推進と地域農業の振興を目指しています。この新しい取り組みは、今後の持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。
まとめ
成田空港のSAF導入プロジェクトは、地産地消モデルを実現し、地域の農業と環境意識の向上を狙った画期的な取り組みです。このプロジェクトの成功が、全国にも良い影響を及ぼすことを期待しています。