中学受験を超える新しい道を模索する『超中学受験論』の魅力
はじめに
教育の現場は大きな変化を迎えており、中学受験も例外ではありません。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏と、知窓学舎の塾長であり教育者の矢萩邦彦氏が共著で出版した『超中学受験論』が、その新たな視点を提供しています。彼らは読者に向けて、学力の向上や学校選びだけでなく、子どもたちの成長と充実を重視した受験のあり方を提言しています。
中学受験の現状
昨今の日本において、中学受験に対する熱意はかつてないほど加熱しています。「良い学校に入ることが将来の成功につながる」という価値観が広がる中、親たちはそのプレッシャーから子どもを守る必要性を感じています。その理由として挙げられるのは、企業の求める人材像の変化や、グローバル化に伴う新たなスキルセットの必要性です。しかし、著者は「良い学校=幸せ」という公式を疑問視し、中学受験そのものがもたらす短所についても語っています。
学びの重要性
本書の中で両氏は、「学力」と「身長」の違いに言及し、どちらも成長するものであると強調しています。さらに、「成長」と「充実」が二大キーワードであり、これは現在の子どもに求められる実践的な能力でもあると述べています。受験における「競争」を極力排除し、子どもの個々の特性を生かすことが、真の学びにつながるとしています。
教育の変化
大手の中学受験塾の構造的な問題に対しては、「生徒一人ひとりと対話をする授業」というアプローチが効果的であると提案しています。受験生が置かれる環境は、恐怖感やプレッシャーを生む要因であり、子どもたちのメンタルヘルスへの配慮も無視できません。子どもたちが安心して学びを深められる環境を整えることの重要性を訴えます。
教育格差とその解決法
「教育格差」とは、家庭環境や地域の差によって生じる学びの機会のニュアンスを含みます。矢萩氏は、地域社会の消失が子どもの放課後体験を奪っている事実にも触れ、その解決策を模索する必要性を訴えています。教育は、お金で解決できるものではなく、コミュニティでの体験やつながりが子どもたちの成長に必要不可欠だというのです。
親の役割
中学受験における親の寄り添い方や、子どもに対する信頼が成長のカギであるとも述べています。「親が子どもの自己像を歪める」にも言及し、子どもにとって何が本当の幸せなのかという問いかけが必要になるとしています。教育の本質を見失わず、親が成長することで子どもにも良い影響があることを伝えています。
まとめ
『超中学受験論』は、単なる受験対策本ではなく、親子のフルコンタクトの結果として生まれたものです。競争を超えた新しい価値観をもとに、共に成長し合える関係を築いていくための指南書です。著者たちの思いを受け止め、受験という冒険を通じて成長する親子を応援したいというメッセージが詰まっています。受験の途中に感じる「沼」にどれだけ深く沈んでいたとしても、必ずそこには「光」が点在していることを示してくれる一冊と言えるでしょう。