慶應義塾大学の研究:再発肺がんの真実に迫る
近年、がん治療の進展が目覚ましい中、特に肺がんは依然として多くの患者に影響を与えています。この肺がんの中でも、EGFR遺伝子変異陽性のタイプは、全体の約2-3割を占めています。慶應義塾大学医学部の研究者たちが、抗がん剤治療後の高度にプライオリティの高い課題である肺がん再発の原因についての新たな知見を発表しました。
研究の背景
これまで、多くのEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)が臨床で使用されてきました。しかし、これらの薬剤の効果は永続的ではなく、一般的には治療開始から1-2年後に効果が薄れ、再発することが多いのが実情です。治療後の肺がん患者の約半数では、再発の原因が不明という状況が続いています。これは、抗がん剤治療がいかに複雑であるかを示しています。
オルガノイドの開発
研究チームは、EGFR遺伝子変異陽性肺腺がん患者から39種類の肺がんオルガノイドを樹立しました。このオルガノイドは患者のがん組織をミニチュア版で再現したもので、EGFR-TKI治療前後のがん細胞の挙動を詳しく調べるための強力なツールとなりました。
ハイブリッドタイプの発見
本研究の重要な成果は、「ハイブリッドタイプ」と呼ばれる新たな肺がんの形態が約4分の1の症例で観察されたことです。これは、肺腺がんと肺扁平上皮がんの特徴を併せ持つタイプで、従来の知見ではカバーされていませんでした。これにより、がん細胞の変異が新たな形態に発展し、再発を促進する可能性があることが初めて示されました。
新しい治療の可能性
さらに、研究チームはこのハイブリッドタイプに対してCDK4/6阻害薬が有効である可能性を見出しました。この知見は、今後の肺がん再発に対する新たな治療法の開発に貢献することが期待されています。
学術的意義
これらの研究成果は、2025年5月11日付けで英科学誌『Nature Communications』に掲載される予定です。研究チームは、この研究を通じて、再発肺がんの耐性のメカニズムを解明し、それに対する有効な治療法の開発に向けた基盤を築くことができると期待しています。
慶應義塾大学のこの重要な研究は、肺がん治療の未来に明るい希望をもたらすものであると言えるでしょう。
詳しくは、
慶應義塾大学のプレスリリースを参照してください。