虹色の火山噴出物
2025-02-19 16:08:13

虹色の火山噴出物とその発色メカニズムの新たな発見

虹色の火山噴出物とその発色メカニズムの新たな発見



国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)の研究チームは、1986年の伊豆大島の噴火で見られる「虹色スコリア」の光彩が、その表面の微細構造によって生み出される構造色であることを明らかにしました。この発見は、火山噴火のメカニズムを理解する上で重要な手がかりとなると期待されています。

スコリアとは、火山の噴火時に生成される軽くて多孔質な噴出物のことを指し、主に玄武岩質または安山岩質のマグマから形成されます。これまで、スコリアには黒色や灰色のものが一般的でしたが、中には青色や虹色の光彩を認めるものもありました。これらの光彩については、正確な分析や成因の解明が行われていませんでした。そこで、研究者たちは伊豆大島の1986年噴火によるスコリアの詳細な観察と分析を行いました。

研究の結果、スコリアの表面に存在する微細な結晶構造が、虹色の光彩を生み出していることが判明しました。具体的には、可視光の波長程度のサイズを持つ球晶が群生する様子が観察され、青色から黄~赤への色の遷移が見られました。これらの微細構造は、火山噴火時の高温ガス環境下で形成されたと考えられています。

この研究は、火山噴火の際に生成される噴出物が、どのようにして地表に悪影響を及ぼすのかを理解するための新たな視点を提供します。スコリアの構造色の発現メカニズムは、火山噴火が進行する過程や、噴煙柱内部の物理化学的状態を理解する上で重要です。これにより、将来的には火山活動の予測やリスク評価にも役立つと考えられています。

本研究の成果は、2025年2月に「岩石鉱物科学」誌に掲載される予定であり、火山の噴火活動に関する新たな知見を提供することが期待されています。

研究背景と手法



火山噴火は、地下のマグマが地表に現れる現象であり、これには様々な火山噴出物が伴います。その中には溶岩や火山灰、火山礫が含まれ、これらは噴火の際の物理的・化学的な条件を反映しています。火山噴出物の分析を通じて、研究者たちはマグマの蓄積条件や噴火時の変動を明らかにしようとしています。

スコリアに見られる虹色光彩の詳細な観察は、1986年に噴火した伊豆大島のB火口で行われました。この火口は噴煙が最大1600mに達した大規模な噴火であり、肉眼で観察できる虹色のスコリアが発見されました。サンプル採取には環境省の許可が必要なため、特別な配慮がなされました。

観察に使用された電子顕微鏡によると、スコリアは表面から内側に向けて色の遷移が確認され、各領域のサイズや結晶の配置が光彩に大きく影響していることが分かりました。このことから、虹色光彩は表面の微細な構造に起因し、物質的な固有色ではなく構造色であることが示されました。

また、スコリアが生じた際の高温ガス環境と冷却過程は、噴煙柱内での特殊な条件に起因していることが示唆されています。スコリアの発現は、火山噴火時の温度やガスの変化を追跡するための新しい指標となる可能性があり、火山学の発展に寄与することが期待されています。

今後の展望



研究者たちは、今後も伊豆大島の1986年噴火によるスコリアの詳細な分子分析や、他の火山で見られる虹色スコリアとの比較を通じて、噴煙柱内部の物理化学的条件の変化を明らかにしていく予定です。これにより、火山噴火のダイナミクスをより深く理解し、新たな機能性材料の開発にもつながる可能性があります。火山活動のメカニズムをより詳しく理解することで、災害予測やリスク管理の向上が図られることが期待されます。


画像1

画像2

画像3

画像4

会社情報

会社名
産総研
住所
電話番号

トピックス(科学)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。