工事用エレベータの位置把握を革新する新技術とは?
建設現場での効率的な作業を支える工事用仮設エレベータ(仮設EV)は、毎日多くの作業員や資材を各階に運搬しており、その管理と運用が生産性向上において重要な役割を果たしています。最近、MetCom株式会社と日本電気通信システム株式会社(NEC通信システム)は、鹿島建設株式会社のグループ企業であるOne Teamと協力し、仮設EVの高精度な位置把握を実現する新たなソリューションの実証を行いました。この取り組みは、位置情報の正確な把握が効率的な運用に不可欠であることを背景にしています。
従来の測位方法の課題
一般的な仮設EVは、自動的に停止階を記録しないため、位置把握には電波ビーコンやICタグを利用するケースが多いのですが、これらは水平方向の精度ばかりが重視され、垂直方向の誤差が大きくなるという問題があります。また、仮設EVや建物側にビーコンを設けることが必要で、コストがかさむ上に管理も煩雑になります。さらに、既存のリアルタイム管理システムでは、的位置情報の把握が求められつつも、従来の測位方法に依存せざるを得ない状況でした。
新たな取り組みの実証
今回の取り組みで、MetComは独自の三次元測位サービス「MBS」から派生した垂直測位技術「Pinnacle」と、NEC通信システムのリアルタイム位置推定アルゴリズムを組み合わせ、仮設EVに小型の測位端末を設置することによって、リアルタイムでの位置情報を高精度に取得することに成功しました。
特に、エレベータの移動イベントを捉えるため、加速度センサーを基にしたMBSトラッカーを用いました。これにより、エレベータが稼働するたびに測位データが記録され、その結果をリアルタイムで分析できます。従来の方法では1分毎にデータを収集していましたが、この新しいアプローチによって、エレベータの移動中も正確にデータを得られるようになりました。
実証結果とその意義
実証では、MBSトラッカーから得られる加速度と気圧のデータを基にエレベータの位置を一貫して把握することができました。結果として、MBSトラッカーは従来のビーコン方式に比べ、約20%多くのエレベータの停止を検知し、階数推定の精度も95%から97%に達することが証明されました。この精度の向上は、建設現場の多様な条件に即座に対応できる新しい方法が確立されたことを意味します。
今後の展望
この成果に基づいて、MetComはこの新たな位置把握ソリューションを他の建設現場にも広げていく計画です。仮設EVの積載能力や運搬する人員・資機材の量などを追跡する技術と組み合わせることで、揚重計画の最適化を図り、さらなる生産性向上を目指します。また、デジタルトランスフォーメーションを進めるために、建設業界に限らず、多方面での社会価値の創造にも寄与することを目指しています。
まとめ
MetComとNEC通信システムは、高精度な位置情報を提供する新たな技術の開発を進め、建設現場の効率化に向けて大きな一歩を踏み出しました。今後もこの取り組みが、あらゆる業界のDXを加速させると期待されます。建設業界の生産性向上に寄与するこの新技術には、注目が集まっています。