耕作放棄地の防災機能の重要性
最近の研究によると、農地が異常気象や自然災害の影響を受けた際でも、耕作放棄地として放置されている農地が防災機能を保ち続ける可能性が示されています。この考え方は、Eco-DRR(生態系に基づく防災・減災)という概念に基づいています。これは自然を活用した防災戦略であり、持続可能な社会構築に寄与するものとして注目されています。
研究の背景
近年、日本では気候変動の影響で台風や豪雨、洪水、土砂災害などが増加しています。これに対抗するために、従来の堤防やダムといった防災インフラの充実が求められていますが、人口減少や高齢化により従来型の防災インフラの維持は難しくなっています。この状況下で、生態系を利用した防災の可能性が注目されているのです。農地は日本全体の面積の1割以上を占め、その多面的機能において防災効果が期待されていますが、耕作放棄地の増加に対する具体的な影響は明らかではありませんでした。
研究成果の概要
東京都立大学の大澤剛士准教授、京都産業大学の西田貴明教授、そして三菱UFJリサーチ&コンサルティングの遠香尚史上席主任研究員は、関東地方を対象に、耕作放棄された農地が防災機能としての役割を果たすかどうかを分析しました。その結果、耕作放棄された農地であっても、水田や畑を問わず、防災効果が維持される可能性が高いことが示されたのです。
関連データ
具体的には、埼玉県、栃木県、群馬県の132の市区町村において、2011年から2019年までの水害の発生状況を分析しました。水田と畑の放棄率がそれぞれ平均6%と18%であっても、水害の発生には影響が見られなかったとのこと。これは、放棄された農地が防災機能を維持していることを示しています。
耕作放棄地の意義
耕作放棄された農地が防災機能を持つことの重要性は、都市開発や土地利用の再構築においても重要です。もし、耕作放棄地が宅地開発などに転換されれば、防災機能が喪失する可能性があります。これに対応するためには、農地をただの食料生産の場として捉えるのではなく、自然の持つ多様な機能を生かすべきです。
また、環境研究や経済的コストを考慮する際にも、耕作放棄地域の保全が求められます。今後は、防災機能を持つ農地をいかにしてグリーンインフラとして活用するかが、全国的な課題となるでしょう。
結論
今回の研究結果は、耕作放棄地が新たな防災インフラとして期待されることを示し、その保全の重要性を再認識させるものです。放棄された農地も有効活用されることで、食料生産だけでなく、地域の防災力向上に寄与すると期待されます。これから、Eco-DRRの考え方が更に進捗し、各地での導入が進むことを望みます。