小型SAR衛星打上げ成功の瞬間
2025年5月17日、ニュージーランド・マヒア半島から打上げられたのは、待望の小型SAR衛星「QPS-SAR10号機・ワダツミ-Ⅰ」でした。この打上げは、ロケット・ラボ社のElectronロケットによるもので、ミッション名は「The Sea God Sees」。
この打上げは、日本時間17時17分に行われ、衛星は約50分後に予定通り分離に成功しました。そして、分離から30分後には無事に初交信も果たされ、各機器の正常動作が確認されました。この成功は、QPS研究所にとっても大きな節目となります。彼らの衛星コンステレーションの構築が着実に進んでいることを示しているからです。
打上げの様子と関係者の言葉
打上げ成功を受けて、ロケット・ラボ社のCEO、Peter Beck氏は「エレクトロンのチームがQPS研究所の衛星を軌道に送り込んだ素晴らしい業績だ」と称賛し、同時に「エレクトロンは高い精度での軌道投入が可能で、小型衛星打上げのグローバルリーダーとしての実績を続けている」と説明しました。
また、QPS研究所の代表取締役社長CEO、大西俊輔氏は「2ヶ月ほど前の『スサノオ-Ⅰ』からの間隔で、10機目の『ワダツミ-Ⅰ』を打ち上げられたことを大変嬉しく思います。今後も引き続き密に連携し、衛星コンステレーションの構築を進めていきたい」とコメントしています。
SAR技術の進化と今後の展望
QPS-SAR衛星は、合成開口レーダー(SAR)技術を用いており、昼夜を問わず地表の詳細な画像を取得できます。特に、即座に観測データを取得できるこの技術は、天候に左右されず地球を監視できる利点があります。QPS研究所は、この技術を使って、民間SAR衛星の中でもトップレベルの46cm分解能を誇る画像を取得しています。
今後も、QPS研究所は2028年までに最大36機の衛星コンステレーションを目指しており、これにより平均10分ごとの準リアルタイム観測データ提供サービスを構築する計画です。これにより、より詳しい情報がさまざまな分野で利用されることが期待されています。また、同じく重要なのは、これらのデータによって環境監視や自然災害への迅速な対応が可能になることです。
Rocket LabとQPS研究所の協力関係
Rocket Lab社は、2006年に設立され、カリフォルニアを拠点とするロケット開発企業です。最初の打上げからエレクトロンは、米国において年間2番目に多く打ち上げられるロケットとしての地位を確立しています。今回の打ち上げで、Rocket Lab社は今年の通算打上げ回数を64回に達しました。
QPS研究所は、2005年に福岡で創業され、特に宇宙産業の発展に寄与することを目指しています。「QPS」は九州パイオニアの頭文字を取ったもので、地域に根ざした技術開発を行っています。現在、彼らは全国の多くのパートナー企業と連携し、未来の宇宙産業を支えるための研究を続けています。これからも、QPS研究所とRocket Lab社の協力によって多くの小型衛星が打ち上げられることが期待されます。
まとめ
小型SAR衛星「ワダツミ-Ⅰ」の打上げは、宇宙開発の新たな一歩であり、今後の地球観測における新しい可能性を提示しています。これからの技術の発展と共に、私たちの生活や地球環境をより良くするためのデータが提供されることを楽しみにしています。