国境なき医師団が訴える感染症対策の資金不足
国境なき医師団(MSF)は、世界のリーダーたちに対し、感染症対策に向けた180億米ドル(約2兆7858億円)の資金拠出を求めています。この呼びかけは、南アフリカのヨハネスブルグで開催される「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(グローバルファンド)の第8次増資会合に先立って行われています。国際的な支援がなければ、HIV、結核、マラリアに関するサービスが大幅に削減され、再流行の危機が高まることが懸念されています。
MSFの保健政策顧問、テス・ヒューエット氏は、「国際社会は今、立ち止まる余裕はありません。持続的な投資の必要性が高まっているにもかかわらず、主要な拠出国は大幅な削減を示唆しています」と警告しています。
資金不足がもたらす深刻な影響
目標の180億米ドルを達成できなければ、重要なプロジェクトの資金が不足し、結核やマラリアの新技術導入にも影響を与える恐れがあります。特に結核対策では、資金援助の76%をグローバルファンドが支えており、その削減は致命的な結果を招く可能性があります。
また、資金提供が減少すれば、医療費の負担が最も資金的に脆弱な患者に転嫁されることにもなりかねません。これは特に経済的に困難な状況にある国々で顕著です。すでに患者の自己負担が医療資源の重要な部分を占めている中で、更なる負担増は深刻な問題です。
各国の誓約状況
現在、ドイツと英国の2か国のみが資金拠出を誓約していますが、いずれも前回よりも削減されています。ドイツは13億ユーロから10億ユーロ、英国は10億ポンドから8億5000万ポンドに減少しており、インフレを考慮すれば増加した国は皆無です。この状況はHIV、結核、マラリアに影響を受ける世界中の人々に壊滅的な事態をもたらす可能性があります。
MSFは、11月21日に確実な資金拠出を約束するよう呼びかけています。持続可能な開発目標(SDGs)の達成を加速させるためには、全額の180億米ドルが必要です。国家間の協力が求められる中、特に日本に対しても積極的な拠出を促しています。
未来に希望を持つために
新型コロナウイルスによって加速された感染症対策の重要性を再確認する中、国際的な支援を確保することは、全世界の公衆衛生にとって不可欠です。MSFは、適切な資金があれば2300万人の命を守り、わずか6年で死者数を半減できると主張しています。持続可能な公衆衛生のため、各国が共同してこの問題に取り組むことが急務です。
今後の拠出意思表示に目を光らせ、感染症対策の一環としての資金確保の動向を注目していきましょう。