認知症ケアの新たな一歩を考えるシンポジウム
2025年5月14日、東京都内で「認知症をめぐるビジネスケアラー・ワーキングケアラーの実情を考えるシンポジウム」が開催されました。このシンポジウムは、日本イーライリリー株式会社と株式会社日本総合研究所によって企画され、140名以上の参加者が集まり、認知症に関する重要なテーマについて議論が交わされました。
認知症ケアの課題
近年、介護を受ける家族の認知機能障害が深刻化する中で、ビジネスケアラーやワーキングケアラーの仕事に対する影響が大きくなっています。調査によると、介護が必要な家族の認知機能が低下するほど、仕事に対する精神的・肉体的な影響があることが明らかになりました。具体的には、介護による精神的ストレスで仕事に集中できないと答えたビジネスケアラーは、そのスコアが高くなるにつれ増加しています。
「介護の肉体的な疲労が残る」との回答も同様で、認知機能障害が重いほど、仕事に身が入らない割合が高まっています。このことから、介護をする側のメンタルヘルスや仕事の生産性を考慮する必要があります。
また、本調査では、ビジネスケアラーの約40%が「認知症を正しく学ぶ機会」を企業に求めており、さらには「家族の認知症を早期に発見・診断するための支援」を望んでいることも明らかになりました。企業がこのような支援を提供することが、従業員の介護と仕事の両立を助ける一助になると考えられます。
日本の認知症と企業の役割
日本において、2040年には約600万人が認知症を患うとされています。これは国民の約7人に1人、高齢者のおよそ15%に相当します。このような状況下、企業は認知症を自らの課題として捉え、従業員とその家族が快適に働ける環境を提供することが求められています。
シンポジウムでは、基調講演を通じて、認知症への早期の準備・対策が重要であることが強調されました。企業は、従業員に対して認知症に関する正しい知識を提供し、また認知症を持つ従業員が働き続けられる職場環境の整備も求められています。
パネルディスカッション
その後のパネルディスカッションでは、企業、政策、メディアの関係者が「企業に求められる役割と必要な取り組み」をテーマに積極的に意見を交わしました。参加者は、従業員の健康と介護の両立のために、制度設計や教育機会、早期発見支援の重要性について具体的に議論を行いました。
特に、認知症に対する正しい理解を浸透させることが、企業の社会的責任であるとの意見が多く出されました。これにより、従業員が自らの介護に対する不安を軽減できるような取り組みが求められています。
登壇者の意見
登壇者たちは、認知症は誰でも備えておくべきものであり、早期の準備や対策が重要であると述べました。企業文化が「自分ごと化」し、認知症の理解を深めることで、従業員の働きやすさが向上し、ひいては職場全体の生産性向上に寄与することが期待されます。更に、多くの企業が認知症ケアへの対応を考慮することで、社会全体の福祉が向上することに繋がると、参加者は強く訴えました。
まとめ
このシンポジウムを通じて、企業が認知症について正しい理解を深め、その具体的な取り組みを進めていくことが、今後の社会づくりにおいて重要であることが再確認されました。日本イーライリリーと日本総研はこれからも、認知症をめぐるさまざまな利害関係者との連携を深め、共生社会の実現に向けて貢献していく所存です。