中小企業の事業承継問題と後継者育成の現状
フォーバル GDXリサーチ研究所は、日本全国の中小企業経営者934人に対し、事業承継に関する調査を実施しました。調査の結果、事業承継の問題が深刻化していることが明らかになりました。日本は超高齢化社会に突入しており、特に中小企業の経営者の高齢化が進行しています。実際、東京商工リサーチのデータによると、経営者の70代以上、60代がそれぞれ3割を占めるという厳しい現実があります。このような状況下、中小企業の持続可能性が脅かされており、後継者不足が重大な課題として浮かび上がっています。
事業承継の現状
調査結果によると、事業承継に向けた次期後継者が決まっている企業はわずか19.0%にとどまり、候補者が全くいない企業は55.9%にのぼります。これにより、多くの中小企業が事業承継を果たせず、存続の危機に直面している実態が浮き彫りになりました。さらに、後継者育成を行っている企業も約62.6%に過ぎないことから、潜在的な問題は計り知れません。
後継者育成状況
後継者の育成を行っている企業が実施している内容の中で、最も多いのが「経営者との共同作業やプロジェクトへの参加」で、44.8%の企業がこれを実施しています。一方で、経営者から後継者への情報やノウハウの伝承が大きな課題ともなっており、53.4%の回答者がこの点に問題を感じているとのことです。これは、経営者は自身の経験を伝える方法が明確でないため、後継者が育たない一因となっています。
後継者育成に関しての課題
経営者が後継者の育成を行う際の主な障害としては、68.2%の企業が「育成が早すぎる」という理由を挙げています。また、「育成の必要性を感じていない」と回答した経営者も少なからずおり、これは後継者育成に対する意識の低さを示しています。このままでは、事業の存続が危うくなると言われています。実際、調査では今後廃業を検討している企業も約2割存在し、他社への売却予定の企業が約1割を占めています。
未来への提言
多くの中小企業がこの厳しい状況に直面している中、フォーバル GDXリサーチ研究所所長の平良学氏は「経営者は自身の会社のビジョンを明確にし、次代へのバトンタッチを考えることが不可欠である」と指摘しています。後継者育成には単にプロジェクトを振り分けるのではなく、経営者と後継者との密接な連携を大切にし、経験やノウハウのみならず、企業文化や価値観をも伝えていくことが求められます。
また、事業存続を目指す場合、M&Aなどの外部連携の視点も重要です。企業経営は単なる利益追求ではなく、持続可能な発展を目指したものでなければなりません。そのためにも、中小企業における次世代戦略への対応を進めることが急務です。とりわけ、自社の特性を生かした育成方法を取り入れ、後継者育成に真剣に取り組んでいくことが求められます。