日本語版医療特化型LLMの開発とその意義
東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻の松尾・岩澤研究室が、医療現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるため、日本語医療特化型LLM(大規模言語モデル)を開発し、これを用いた対話型AIサービスを発表しました。このプロジェクトは、さくらインターネット株式会社や株式会社ELYZA、株式会社ABEJA、理化学研究所、そして医療機関との共同作業によって進められました。
医療特化型LLMの優れた性能
開発されたモデルは、OpenAI社のGPT-4oやOpenAI-o1を超える93.3%の正答率を持ち、2025年の医師国家試験においてもその性能が確認されています。この驚異的な結果は、日本の医療が抱える人手不足や業務の複雑化といった課題を解消する可能性を示しています。特に、電子カルテデータの標準化を自動化することで、業務の効率を飛躍的に向上させることが期待されています。
開発プロセスとユースケースの検証
松尾研では、オープンソースのLLMであるQwen-2.5-72B-Instructを基に、継続的な事前学習と指示学習を進めることで、日本語の医学知識が組み込まれたWeblab-MedLLM-Qwen-2.5-109B-Instructを構築しました。このモデルは日本独自の医療制度に基づく知識を有し、他のモデルが誤答するような問題に対しても的確な回答が可能です。
また、感染症や検査情報の標準名称への変換といったユースケースについても、F1スコア85%での精度を達成しました。このことは、医療現場におけるデータ標準化のプロセスにおいても大きな進展をもたらすものと考えられています。
今後の展望と企業への影響
東京大学のこの取り組みは、2025年度のNEDO事業においてさらに発展する見込みで、複数の医療機関との連携を進め、LLMエージェントの安全性を評価する仕組みを構築する予定です。これにより、治験患者の探索やレジストリの構築等、医療現場の業務を自動化することができ、製薬企業に必要なデータを迅速に提供する道が開かれます。
医療現場への導入と利用方法
松尾研による対話型AIサービスは、2026年3月から8月末までの期間中に提供され、ユーザーはこのモデルを用いて医学試験の問題や医療に関する質問をすることが可能です。ただし、本サービスは診断や治療のための使用には適していません。
この取り組みは、東京大学が主導する科学的な研究とその成果の社会実装を目指したものであり、深層学習分野での今後の発展が期待されます。日本の医療現場におけるAI技術の向上は、人々の健康を支えるための大きな一歩となるでしょう。
お問い合わせ
興味を持たれた方は、東京大学の公式ウェブサイトを訪れて最新の情報を取得することができます。松尾・岩澤研究室は今後も研究と社会貢献を積極的に進めていく予定です。