海藻養殖が海の生態系回復に貢献する未来を探るイベント開催

海藻養殖が導く生態系回復の未来

2024年12月18日、東京建物ブリリアラウンジにて「GOOD SEA DAY：海藻が支えるネイチャーポジティブ」が開催されました。このイベントには、約100名の報道関係者や企業担当者が集まり、一般社団法人グッドシーが海藻養殖の持つ重要性をテーマにした調査結果を発表しました。

グッドシーは2023年に設立された団体であり、海藻を中心とした海洋生態系の保護と活用を目的としています。特に公益財団法人日本財団の支援を受け、海藻類を含む海洋生態系の調査を行っています。この日のイベントでは、海藻養殖が海の生態系の回復に貢献する可能性について、定量的なデータに基づく報告が行われました。

海藻の重要性とは？

第一部では、グッドシー理事である蜂谷潤氏が海藻と藻場の役割について説明しました。海藻を含む藻場は、水質の浄化や酸素の供給、生物多様性の維持など、海洋生態系の根幹を支える重要な存在です。しかし、近年の調査によると、藻場の面積は1990年の約34万ヘクタールから2017年には約17万ヘクタールへと激減しています。この減少は、護岸工事や温暖化、そして海藻を食べる生物による食害などが主な原因です。

新たな取り組み「養殖藻場」の提唱

食害に対する対策として、ウニの駆除や保護網の利用が考えられますが、経済的な制約から限界があります。そこで提案されたのが「養殖藻場」という概念です。これは、海藻をロープや籠を使用して養殖することで、食害を避けつつ藻場を再生する手法です。この方法は、漁業者にとっても収益性のある持続可能な取り組みとして支持されています。

実際、グッドシーは函館のコンブ、今治のヒジキ、天草のトサカノリを使用し、生物多様性や生物量について調査した結果、養殖藻場における生物の豊かさが確認されました。最大で400万〜2億個体の増加が見られ、生態系の根幹を支えるものとしての役割が再確認されています。

養殖藻場の未来とその影響

調査データでは、天然藻場が年間約6000ヘクタール減少している点を考慮すると、仮にその全てを養殖藻場とすることができれば、1800万個体の魚類が新たに増加する可能性が示されています。このような未来を実現するためには、全国の漁師や関係者の協力が欠かせません。また、海藻の生産技術の向上や初期投資の課題解決が求められます。

パネルディスカッションでは、自治体や企業も海藻活用に向けての期待と課題について議論されました。環境省からは、ブルーカーボンや生物多様性回復の重要性が強調され、パナソニックでは海藻を通じた健康経営についての取り組みが紹介されました。また、海藻の消費拡大を目指すために、さまざまな料理法の提案も行われました。

海藻を使った料理の試食

最後のセッションでは、海藻料理研究家が手がけた料理の試食が行われました。参加者は、海藻を使用した多様な料理を味わうことができ、海藻が持つポテンシャルや新しい食文化に触れる機会となりました。

未来への展望

グッドシーは、2025年以降も海藻のおける調査や文化に関する研究を続け、海洋生態系の豊かさを追求していく考えです。海藻を通じた新しい価値観やビジネスモデルを生み出すことが期待されています。今後のイベントも予定されており、海藻の可能性についてのさらなる議論が展開されることでしょう。

このように、海藻養殖は単なる食材供給にとどまらず、海の生態系を復活させるための重要な手段であることが、このイベントを通じて多くの人に伝わったのではないでしょうか。