医療現場の常識を覆す!無電源で輸液バッグを加圧可能な「吊るさない点滴」が医療機器として登録
従来の点滴は、輸液バッグを点滴スタンドに吊るし、重力を利用して薬液を患者の静脈に投与するのが一般的でした。しかし、この方法では患者の移動が制限され、転倒事故や血液の逆流事故のリスクもありました。
そんな従来の点滴の常識を覆す画期的な技術が誕生しました。産業技術総合研究所(産総研)と入江工研が共同開発した「吊るさない点滴」は、無電源で輸液バッグを加圧可能な機構を搭載し、点滴スタンド不要で患者が自由に動けることを実現しました。
大気圧を利用した革新的な加圧技術
「吊るさない点滴」は、大気と真空の圧力差を利用した空気加圧技術を採用しています。輸液バッグを挟むようなサンドイッチ型の空気バッグ機構により、重力による吊り下げ点滴と同等の吐出性能を実現しました。
災害時にも役立つ!患者の移動制限を緩和
この技術は、電源を必要としないため、災害時など停電時でも使用可能です。また、患者の移動制限を緩和することで、病院施設内での移動はもちろん、在宅での生活の質向上や緊急移送時にも活用できます。
開発の背景
産総研では、流量についての計量標準の開発と供給に従事する中で、医療現場から「点滴による生活の不自由さを軽減したい」という強いニーズを受けました。産総研の流体制御と計測技術、入江工研の真空技術を融合し、長年の研究開発の末に「吊るさない点滴」が誕生しました。
課題克服と技術革新
開発チームは、重力に頼らず安定した輸液を実現するために、様々な試行錯誤を繰り返しました。当初は、寝袋型の空気バッグを用いたものの、十分な吐出性能を得ることができませんでした。その後、輸液バッグの表面に皺が生じることが原因であると突き止め、サンドイッチ型空気バッグという革新的な機構を開発しました。この機構により、輸液バッグを効果的に圧縮し、重力と同等の吐出性能を達成することに成功しました。
今後の展開
開発チームは、今後もユーザーからの意見を参考に、点滴ポンプの携帯性と操作性を向上させるための技術開発を続けていく予定です。
「吊るさない点滴」は、医療現場における患者の生活の質向上に大きく貢献するだけでなく、災害時など様々な場面で活躍が期待される革新的な技術です。