中川政七商店、300年の歴史を経てB Corp認証取得と循環プログラム始動

300年の伝統を持つ中川政七商店がB Corp認証を取得

奈良県奈良市に本社を置く株式会社中川政七商店は、1716年の創業以来、300年以上にわたって伝統工芸に携わってきた老舗企業です。2025年8月に、社会的責任を果たす企業として国際的に認められる「B Corporation™」（以下B Corp）を取得することが決定しました。これは同社の長い歴史と、工芸業界でのリーダーシップを象徴する意味を持っています。

B Corpは、企業が社会や環境に配慮しながらビジネスを展開することが求められる国際認証制度です。中川政七商店は、工芸を未来へとつなぐための新たな挑戦を加速させるために、B Corpの取得を手がかりにしています。企業が持つ文化的価値を、次世代に伝えるための試みとして、新たに「工芸のしまいかた」を考える循環プログラムもスタートします。

循環プログラムの概要

2026年1月下旬から始まるこのプログラムは、使用されなくなった自社商品を回収し、修復・再流通させることで、資源の循環を目指します。具体的には、消費者から不要な商品を中川政七商店が回収し、金継ぎや染め直しなどの修繕を施した上で、自社店舗にて再販するシステムを構築します。第一弾として、陶磁器を対象とし、その後は衣類への展開も計画されています。

このプログラムはただ単に商品を収集するだけでなく、使い手の思いを次のユーザーへと引き継ぐ仕組みも盛り込まれています。商品の回収時に、エピソードや思い出を書いていただくことで、次の使い手にそのメッセージを届けることができます。

日本の工芸を未来につなぐ

中川政七商店は「日本の工芸を元気にする！」というビジョンを掲げ、地域社会と共に工芸を育む取り組みを続けてきました。B Corp認証の取得により、企業は社会貢献活動の強化を図り、さらに工芸業界の発展に向けた責任を果たすことが求められます。

特に、自然素材の枯渇が進む中、限られた資源を最大限生かすためには、ものづくりだけでなく、使い終えたものをどう循環させるかが重要です。この取り組みが、工芸に対する新たな価値の提供となり、持続可能な社会の実現に寄与することが期待されています。

また、再販売による売上の一部は、製造元や工芸地域の団体に還元されます。これにより、修理や元材料購入へと転換され、持続可能なものづくりが促進されるのです。

経営者の思い

代表取締役社長の千石あや氏は「文化のよりしろである工芸を100年先にもつなげるため、持続可能な形を模索していきたい」と述べています。物づくりの新たな責任を共有し、次世代へつなぐための試みとして、B Corp認証は中川政七商店にとっての出発点となります。

このように、中川政七商店は将来にわたって持続可能な形で工芸を発展させるための具体的な道筋を描いており、今後の活動が注目されています。