AI活用の現実
2025-12-18 13:23:33
AI活用による生産性向上の潜在力:EY調査が示す現実
AI活用による生産性向上の潜在力:EY調査が示す現実
EYが実施した「2025 Work Reimagined Survey」によると、企業はAIを効果的に活用することによって、生産性を最大40%向上させる可能性があることが明らかになりました。その一方で、現状のAI活用が限られた基本的な作業にとどまっていることが課題として浮かび上がっています。
調査結果の概要
この調査は、世界の29ヶ国から1万5,000人以上の従業員と1,500人のビジネスリーダーを対象に行われました。その結果、約88%の従業員が日常業務でAIを利用していると回答していますが、その多くは検索や文書の要約といった基本的な機能に限られています。
特に注目すべき点は、業務の進め方を根本的に変える形でAIを活用している従業員がわずか5%にとどまっていることです。このことから、AI活用が進む一方で、不安や抵抗感が職場における価値創出の可能性を妨げていることが分かります。
スキル低下と業務量の増加
調査によると、従業員の37%がAIに過度に頼ることで自身のスキルや専門性が低下することを懸念しており、実際に64%が過去1年間で仕事量の増加を感じていると述べています。しかし、AIの研修を受けている従業員はわずか12%であることも指摘されています。これらの結果は、人材に対する教育やサポートの不足が、生産性向上の妨げとなっていることを示しています。
シャドーAIの拡大
企業が社内向けのAIツールの整備を進めているにもかかわらず、「シャドーAI」と呼ばれる非公式のAIツールが依然として広がっている状況があります。調査によると、23%から58%の従業員が自身で選んだAIツールを職場に持ち込んでいることが明らかになりました。この現象も、企業のAI導入と人材戦略の整合性の欠如が影響しています。
人材優位性の重要性
本調査の結果は、単に技術を導入するだけでは効果が上がらず、人とAIを効果的に統合するための人材戦略が必須だということを示しています。「人材優位性」を確立している組織は、より多くの価値を生み出していることが明らかになりました。しかし、現在までにこの水準に達している組織は28%しかありません。
リーダーシップと組織文化の役割
EYのリーダーであるKim Billeter氏は、AIが広がる中で、その活用が基本的な作業にとどまっている現状に警鐘を鳴らしています。リーダーシップは、人材健全性を保ち、効果的なテクノロジー活用を支えるために極めて重要です。リーダーがチームメンバーを気にかけ、信頼し、権限を与えることで、組織文化の方向性が形成され、人材の健全性も高まります。
今後の展望
この調査の結果を受け、企業はAIを「単なるツール」としてではなく、「人と共に価値を生み出す拡張された労働力」として位置付ける必要があります。そのためには、スキル開発や役割の再定義、評価報酬制度の見直しなどを行い、人とAIが補完し合う新たな労働力モデルの構築が求められます。
EYの調査は、企業がAIを活用し、その潜在的な価値を引き出すためには、従業員の教育と組織文化の変革が不可欠であることを示唆しています。これからの時代、企業が持続可能な成長を遂げるためには、人材戦略とテクノロジーの両面からのアプローチが必要不可欠です。
会社情報
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EY Japan
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