介護の未来を切り開く「SOIN-R」システムの導入と成果
日本老人福祉財団(本部:東京都中央区、理事長:小口明彦)は、2023年度から介護付有料老人ホーム「ゆうゆうの里」開設と管理にAIを利用した介護予防・将来予測システム「SOIN-R(そわん-えーる)」を導入しました。このシステムは、全国7箇所で展開され、入居者の健康を保つための重要なツールとして活用されています。
「SOIN-R」は、入居者の生活状況を可視化し、彼らの状態を4つの段階にわけて判断します:自立(健常)、プレフレイル、フレイル、要介護状態。また、生活の質を左右する7つのカテゴリ(例:運動機能低下、認知機能低下など)において、入居者の変化を把握することが可能です。このシステムにより介護スタッフは必要な支援をタイムリーに行うことができ、入居者には健康維持への自覚を促します。
2023年8月に京都の「ゆうゆうの里」で導入された「SOIN-R」は、その効果を確認するための追跡調査を行いました。入居者125名に対する1年後の状態を調査した結果、42名(34.4%)は改善し、65名(53.2%)は状態を維持、そして15名(12.3%)が状態が悪化したことが分かりました。この結果は、介護予防に関する対応が入居者の健康に寄与したことを示しています。
システムの効果は、入居者自らが健康に気を配るようになったことや、新型コロナウイルスの影響で活動範囲が広がったことが大きな原因とされています。また、生活を支える職員によるサポートも入居者の意識を高める上で重要な役割を果たしています。具体的には、職員が定期的に健康状態について意見を共有し、入居者との信頼関係を築くことができたのです。
2024年度には、日本全国の7つの施設でこのシステムの導入が進められ、入居者1,370名への面談形式でのフィードバックが実施される予定です。初回のアンケートでは、フィードバックを受けた入居者の半数以上が「気づきがあった」と回答し、介護予防意識の向上が見られました。加えて、入居者たちからは今後の具体的なアドバイスを求める声が上がっており、さらなる個別対応が期待されています。
一方、職員からも「SOIN-R」による数値評価が関係構築の手助けになったとの意見が多く、定期的な面談が入居者との間でのコミュニケーションを強化する良い機会になったことがわかりました。職員は、グラフやデータを用いることで利用者自身の実際の状況を理解してもらうことができ、信頼関係の構築や問題の早期発見に寄与したと感じています。
「SOIN-R」の開発には、AI技術を持つ株式会社シーディーアイが関わっており、今後さらなる進化が見込まれています。特に、生成AIを活用して入居者に対するパーソナライズされたアドバイスを実現する計画があり、個人ごとの状態により適した提案が可能になることが期待されています。
日本老人福祉財団は、「豊かな福祉社会の実現」を使命に掲げ、今後も「SOIN-R」を通じた介護DX推進に注力し、入居者にとっての安心・安全な生活環境を整えつつ、職員にとっても快適に働ける職場作りを目指しています。