日本ゼオン、企業間データ連携とAIモデルの飛躍
日本ゼオン株式会社(東京都千代田区)が、新たな段階を迎えました。異なる企業間での実験データを効果的に連携し、AIモデルの物性予測能力を向上させる技術を実証したのです。これによって、企業間のデータを秘匿化したままでの共有が可能となり、将来的には研究開発のスピードと効率が飛躍的に改善されることが期待されています。
背景
データは、現代の素材産業において極めて重要な資産ですが、多くの企業が独自のデータ基盤でデータを利用している現状では、国際競争力を強化することは難しいとされています。特に異なる企業間でデータを連携する際には、「データの秘匿性」と「予測精度の向上」が不可欠です。これをクリアするために、ゼオンは自社の総合開発センターを中心に、セキュアなデータ連携プラットフォームの構築を進めています。
新たな成果
今回の実証では、2つの重要な成果が得られました。まず、ゼオンとそのグループ企業であるゼオンケミカルス(米国ケンタッキー州)の間で実験データの連携を成功させたことです。独自の変換プログラムを用いることで、異なる配合物の情報を効果的に繋げ、高品質なデータベースを実現しました。具体的には、7,000以上の配合データが集積され、これによりデータの質が向上しました。
次に、連携したデータを元に訓練したAIモデルの予測性能が向上したことが確認されました。具体的には、ゴム物性値の予測が従来よりも高精度になったのです。これについては、異なる条件下で訓練したAIモデルの結果を検証し、連携データがより優れた予測結果をもたらすことが証明されました。
今後の取り組み
ゼオンは今後、秘匿性を守るための秘密計算技術に焦点を当て、SBテクノロジー株式会社と連携してさらなる検証を進めます。具体的には、ハードウェアの隔離領域でデータを扱うことが出来るTEE技術を活用し、今回の成果の再現性を追求します。
ゼオンは、今後もゴム業界におけるデータプラットフォームの構築を通じて新たな価値を提供するだけでなく、さまざまな素材産業に向けた展開を視野に入れています。この取り組みが実を結ぶことで、研究開発の効率化やビジネスモデルの変革が進むと期待されています。まずはゴム業界から始め、将来的にはその他の材料分野への拡大を図る計画です。
まとめ
ゼオンは、持続可能な社会を目指して新たな技術やサービスの提供を進めています。独自のデータ活用法を見つけ、企業間の連携を進めることで、研究開発の効率向上とともに新たな価値の創造を目指しています。これにより、業界全体が競争力を高めていくことが期待されます。