新開発の血糖値測定センサー
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)の研究チームが注目の新技術を発表しました。この技術は、貴金属を使用せず、かつ夾雑物の影響を排除した血糖値測定センサーで、医療現場に革新をもたらします。センサーは、携帯性に優れ、コストも抑えた小型設計が特徴です。
1. 技術的背景
これまでの血糖値測定では、白金電極を用いることが一般的でした。しかし、血液中の溶存酸素やビタミンC(アスコルビン酸)が干渉し、測定精度が損なわれるという問題がありました。この問題を解決するために、研究陣はPB/G/PSSという新たな電極材料を開発しました。これにより、従来のセンサーでは難しかった夾雑物の影響を受けずにグルコースを測定することが可能になりました。
2. センサーの性能
新しく開発されたこのセンサーは、幅広い濃度域でグルコースを測定することができます。具体的には、空腹時の血糖値(70~100 mg/dL)だけでなく、0~270 mg/dLの範囲での測定が可能です。加えて、PB/G/PSSを作用極だけでなく参照極としても使用することで、一貫した高性能を維持できることが確認されています。
3. 医療における意義
この技術の導入により、血液ガス分析装置が小型化され、より迅速な検査が求められる救急医療の現場において大きな役割を果たすと期待されています。従来の装置は動脈血を使用するため、特に小児患者にとっては負担が大きかったのですが、新たなセンサーは少量の血液で検査が可能なため、患者への負担を軽減します。
4. 環境とコストへの配慮
また、貴金属を使用しないこの新しい構造は、供給の安定性を高めると共に、製造コストの削減にも寄与するものです。このように、環境に優しく、持続可能な測定技術としての側面も魅力的です。
5. 今後の展望
今後、開発された小型センサーは血液ガス分析装置に組み込まれる予定です。これにより、医療現場におけるその場分析が一層進化し、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に寄与することが期待されます。また、この技術は血糖値以外にも、糖やアミノ酸などのバイオセンサーへの応用が期待されており、医療の発展に貢献することでしょう。
論文情報
掲載誌:
ACS Electrochemistry
論文タイトル:Environmentally Sustainable, Noble-Metal-free Enzyme Sensors Capable of Functioning in the Presence of Ascorbic Acid
著者:Akiko Yoshida ほか
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