コーセーがオンラインカウンセリング用の気分推定モデルを開発
化粧品大手株式会社コーセーが、関西大学の瀬島吉裕教授との共同研究によって、オンラインカウンセリングの現場でお客さまの気分をリアルタイムで推定できる数理モデルを開発しました。この技術は、美容相談の際にお客さまの感情の変化を即座に把握し、個々のニーズにより一層寄り添ったカウンセリングを実現することを目指しています。特に、カウンセリングを受ける際の音声データをもとに気分の高まりや落ち込みを捉えることが可能であり、従来の対面カウンセリングにはなかった新しい体験を提供します。
研究の背景と目指すもの
近年、多忙なライフスタイルを送る方々に支持されているオンラインカウンセリング。利用者は自宅にいながらにして、気軽に美容や化粧品に関する相談ができるという利点があります。しかし、画面越しでのコミュニケーションには限界があり、特にお客さまの本音や微細な感情の変化を察知することが難しいのが現状でした。そのため、より良いサービス提供のためには、顧客の気分を的確に捉える技術が必要とされていました。
コーセーの調査によると、オンラインカウンセリングを受けた人の90%が美容への興味が高まったと回答し、70%は購入検討や店舗訪問を行っています。こうした結果を受け、さらに多くのお客さまに満足してもらえるよう、気分推定モデルの開発に取り組んだのです。
気分推定モデルの具体的な仕組み
瀬島教授によって開発されたモデルは、従来のオンラインコミュニケーションを前提としたものとは異なり、カウンセリング特有のコミュニケーションスタイルに対応するために再設計されました。このモデルは、お客さまと美のコンサルタント(BC)との対話の中で生まれる「場の雰囲気」を温度変化で表現します。会話の中での感情の流れを熱の移動として考え、それぞれの役割に応じた推定が行えるよう工夫されています。
実際に試験的に行った21名のモニターによるオンラインカウンセリングでは、モデルが推定した気分の変動と本人の自覚的な気分との一致が高いことが確認され、モデルの有効性が実証されました。
今後の展望
今回の気分推定モデルは、オンラインカウンセリングにとどまらず、接客業全般に応用可能な技術です。今後もコーセーは、一人ひとりのお客さまに寄り添った、より質の高い美容提案を目指して先進的な技術の開発を続けていく考えです。2024年11月18日から20日には、兵庫県で開催される第2回日本化粧品技術者会学術大会で本研究成果を発表予定です。
この新技術によって、カウンセリング業界にどのような変化がもたらされるのか、今後の展開が大いに期待されます。