『ぼくたちの卒業写真』の魅力
新興出版社啓林館から発売された『ぼくたちの卒業写真』は、青春の真っ只中にある中学生たちを描いた物語です。本書は、「文研じゅべにーるYA」シリーズの一環として、読者に新たな価値観や人間関係の重要性を伝えています。
あらすじ
物語は、友達が少ない“暗すぎクラギ”こと蔵木が、学年一の人気者である星野からの提案を受けるところから始まります。卒業アルバムの個人写真をもっと自由に撮影しようというこの提案は、蔵木にとって一見負担に思えるものでした。というのも、蔵木は人との関わりが苦手であり、撮影をすること自体が大きな挑戦でした。しかし、彼は星野の熱意に押されてこの撮影を引き受けます。
ある意味で、アルバムは彼にとって新たな登場機会となります。自身がプロ並みの腕を持つ写真館に勤務しているとはいえ、蔵木は人物写真を避け続けてきたのです。しかし、シャッターを切るたびに、同級生たちの新たな一面を発見し始め、次第に彼らとの関係が変化していく様子が描かれています。撮影を通じて蔵木は、友人との衝突を経験しながらも、彼自身が成長していく様子が交錯し、読者に心の葛藤と共感を呼び起こさせます。
蔵木の成長と友情
本書の大きなテーマは「理解」です。ただ褒め合うだけの関係ではなく、心から気持ちを通わせることの大切さが本作を通して丁寧に描かれています。蔵木が星野や同級生たちと共に成長していく様子は、読者に対しても自らの人間関係を見直すきっかけとなるでしょう。多様性を受け入れるためには、心の壁を取り払い、他人を理解しようとする意識が必要であることを、この本は教えてくれるのです。
クリエイターに迫る
著者の天川栄人は、岡山出身で京都大学を卒業した実力派。『セントエルモの光 久閑野高校天文部の、春と夏』など、多くの受賞歴があり、その言葉には深みがあります。絵を手掛けたくまおり純も、数々の著名な作品に関わってきた画家であり、彼の装画がさらに物語の魅力を引き立てています。
大切なメッセージ
『ぼくたちの卒業写真』は、ただの児童文学にとどまらず、心の奥深くに触れるようなメッセージを持っています。友人関係に悩むすべての中学生、さらには大人たちにも読んでほしい作品です。この本を手に取ることで、他人との関係性、そして自分自身のあり方について考え直す契機になるかもしれません。
本書は、中学生以上の読者を対象にしており、卒業アルバムという題材を通じて多様性を理解し、心の成長を促す一冊です。興味のある方は、ぜひ書店で手に取ってみてはいかがでしょうか。
作品情報
- - 書名: ぼくたちの卒業写真
- - シリーズ: 文研じゅべにーるYA
- - 対象: 中学生以上
- - 判型: 四六
- - 本体価格: 1760円
- - ISBN: 978-4-580-82695-3
- - 公式サイト: 新興出版社啓林館
この物語は、今この瞬間も誰かの心に寄り添うことでしょう。