ニッチトップ企業 高木ゴムがM&Aを決断した背景とは
高木ゴム工業株式会社は、食品飲料プラント向けのゴムパッキンで国内シェアが7割を占める工業用ゴム製品メーカーである。1951年に設立されて以来、70年以上の歴史を持ち、その成長を支えてきたのが3代目社長の松崎隆一氏だ。松崎社長は、30代の頃から将来の事業承継に関して深く考えていた。
早期の事業承継の意識
松崎社長は、経営をプロが担うべきだとの思いから親族への事業承継を選択せず、40代に入ったころからM&Aを意識するようになり、55歳を迎えるタイミングで具体的な検討を始めた。この段階から、彼の人生設計に基づくM&Aの選択が始まる。
そして2024年11月、彼は日本M&Aセンターの仲介を経て、大阪府に本社を置く株式会社GWEに高木ゴム工業を譲渡することに成功した。面白いことに、譲渡後も松崎社長は取締役社長として継続勤務しており、「毛利社長からの若い提案に刺激を受けて、社長業が楽しい」と笑顔で語る。
事業の多角化を目指して
一方でGWEも、自動車関連のゴム製品を製造する企業であり、2024年には半導体領域への進出も視野に入れている。松崎社長の高木ゴムが持つ強力なシェアとGWEの技術力が組み合わさることで、新たなビジネスチャンスが広がる。GWEは今後の成長に向けて、ライフライン事業への進出も模索している。このバックグラウンドの中で日本M&Aセンターが高木ゴム工業の提案を行ったことが、両社の意気投合へと繋がった。
相乗効果の実感
M&Aから6カ月が経過した現在、両社は迅速にグループのサプライチェーンを明確化し、お互いの工場を最大限に活用するための取り組みを進めている。松崎社長は、「経営の相談ができる仲間ができたことは本当に心強い」と話し、企業グループの可能性について自信を示している。
高木ゴムとGWEの未来
高木ゴム工業は、自社の強みを生かしながら新たな市場に挑む姿勢を崩さず、さらなる成長を遂げていく考えだ。また、GWEはM&Aによって事業の幅を広げ、エネルギーやライフライン事業の進出も視野に入れている。このように両社の戦略的な統合が、今後の企業の成長を支えることになるだろう。
企業の意志決定に伴うリーダーシップや、事業承継とM&Aの重要性を再認識させてくれる事例だ。今後の両社からのさらなる発展に注視したい。