シドニーでの長距離音声通信実験
1. はじめに
株式会社ビーマップがオーストラリア・シドニーで実施した実証実験が注目を集めています。この実験では、次世代Wi-Fi規格「Wi-Fi HaLow」を利用し、通常の通信距離を大幅に超える約6kmまでの長距離音声通信を実現しました。この成果は、日本国内における電波出力の規制緩和に向けた一歩としても意義深いものとなっています。
2. 実証実験の背景
日本国内では、Wi-Fi HaLowの送信出力が20mWに制限されているため、通信距離が1km程度に留まっています。一方で、総務省は指定周波数帯の送信出力を200mWに引き上げる検討を進めており、2026年度内には規制緩和が期待されています。そのためビーマップは、早期に250mWの送信出力が認められているオーストラリアにおいて、実験を行いました。
3. 実験の概要
この実験は、シドニーのポート・ジャクソン湾にある高台のホテルで行われました。実験には、Morse Micro社の最新のWi-Fi HaLow向けSoC「MM8108」搭載の評価キットが使用され、セーバー社が開発した最適化アプリケーションを通じて音声通信が行われました。
実施場所
- - エリア: シドニー・ポート・ジャクソン湾周辺
- - 距離: 約5.8km
実験では、ホテル7階に設置したアクセスポイントから対岸のワトソンズベイまでの通信が成功しました。
4. 実験結果
実験の結果、5.8kmの距離において平均通信速度500kbpsを実現し、安定した音声通信が確認されました。音声通信試験では、明瞭な音質とともに「3相当」の音質評価を得ています。これにより、高出力のWi-Fi HaLowによる通信エリアの拡大が証明され、産業用途や防災通信システムの実用性が示されました。
5. 今後の展望
ビーマップは得られたデータをもとに、2026年度の規制緩和に向け、産業用ネットワークや防災システムの製品開発を進める予定です。特に、地方の通信環境改善や防災対策、そして防衛関連の通信基盤としての活用が期待されています。
6. 代表取締役のコメント
ビーマップ社の杉野社長は、「シドニーは技術の中心地であり、Wi-Fi HaLowの普及において新たな可能性が広がる」と述べています。特に日本国内の電波空白地帯の問題解決に寄与すること、また災害時の通信網構築への期待が表明されています。
7. 結論
シドニーで成功したこの実験は、今後のWi-Fi HaLow技術の発展に向けた大きな前進を示しています。日本国内でも、通信規制の緩和が早まることで、さらなる革新が期待されます。特に、農業用途や防災、さらには防衛面での応用が今後の課題となるでしょう。